『少年☆少女☆レアカード』第1巻
山名沢湖 双葉社 \600+税
(2014年9月10日発売)
待ってました。某女児向けアイドル音楽カードゲームに、ドハマりする心理を描いたマンガ。
社会現象化するほど、ハマった子供も大人も全力になる不思議な情熱を、見事に表現してくれている。
作中に登場するゲームは「キャラメル☆ガール☆ミュージック」、略して「キャラ☆ミュ」。衣装を組み合わせてコーディネートし、リズムに合わせて女の子を躍らせる、デパートに置いてあるゲーム筐体だ。
主人公の苑田真那は、特に趣味もなく平凡に暮らす中学2年生。彼女に学校の人気者・春人が突然話しかけてくる。真那がたまたまプレイしていた「キャラ☆ミュ」、彼はこのゲームが大好きで、仲間がほしいがゆえに真那に近づいてきたのだ。
かくして、日々に疲れたシンデレラ真那と、天然王子様な春人の、「キャラ☆ミュ」に夢中で打ちこむ日々が始まる。
真那は「子供のやるゲームにハマって恥ずかしい」「けど楽しい」という心理の代弁者。一方、春人は「やりこみプレイをしているゲーマー」視点。数多くのレアカードを持っており、効率的な稼ぎ方もマスターしている熟練者だ。
この手のゲーム最大の問題点は、レアカードの所持で差がついてしまうこと。真那はそのあたりまったく知識がない。どうコーデしたらかわいいかを考え、キャラに感情移入して楽しんでいる。
本来ゲームは「ワクワクする」からプレイするもの。プレイの強さや勝負そのものを描こうとしていない。ゲームの原点「ワクワク」に戻ろうとする作品だ。
2人が「キャラ☆ミュ」に夢中になる様子は、スポーツや音楽に必死になれる少年少女の姿となんら変わらない。こんなに少女マンガ的な設定なのに、恋愛要素が現時点でいっさいないのも潔い。
真正面から「趣味」に打ちこむ、ひとつの青春のカタチがここにある。
<文・たまごまご>
ライター。女の子が殴りあったり愛しあったり殺しあったりくつろいだりするマンガを集め続けています。
「たまごまごごはん」