小さくておっちょこちょいの女子高生チッチこと小川チイコと、背が高くて八ンサムなモテモテ男子高校生のサリーこと村上聡――2人の初々しく甘酸っぱい恋模様を描いた、みつはしちかこ先生の『小さな恋のものがたり』。今から52年前に連載がスタートしたこの伝説的な超長寿少女マンガが、2014年9月28日、43巻をもってついに、ついに完結となった! まさか完結するなんて・・・・・・(涙)。 後編は26日アップ予定!
ファンを騒然とさせ、話題をさらった最終巻は本サイトの11月の『このマンガがすごい!』ランキング オンナ編でも3位にランクイン。完結と3位ランクインを記念し、みつはしちかこ先生にお話をうかがった。
主人公にはなれない、普通の女の子を主人公にしたい
――まずはじめにお伺いしたいのですが、漫画家になるきっかけ、漫画家への憧れはありましたか?
みつはし 小学生の頃から絵だけは得意で、昼休みによく人にマンガを描いてあげて、エンピツや消しゴムをもらっていたんです。まわりの人たちからも「みつはしさんは将来漫画家になるんでしょう」と言われていましたね。長谷川町子先生の『サザエさん』が大好きで憧れていましたけど、『サザエさん』のようなマンガではなく、私らしいマンガを描きたいと思っていました。
――「そもそも『小さな恋のものがたり』を描こうと思ったきっかけを教えてください。
みつはし マンガを描き始めたのは17歳の頃ですが、思いは小学4年生の頃から始まっていましたね。じつはその頃、最愛の母が亡くなったり、同級生からの仲間に入れてもらえなかったり、兄から言葉のイジメを受けたりしていたんです。でも、その場では決して泣かず、土手の草むらで思いきり泣いていました。
その草むらでは小さな花たちが心配そうに私を見ていてくれて。カラスノエンドウ、イヌフグリ、ハハコグサ、ヘビイチゴ、タンポポ、スミレ、シロツメクサ……とかね。その頃は花の名前は知らなかったけど、その名もない草花を近くで見ると、本当にきれいでかわいくて、花屋さんで売っている花よりずっと美しいと思ったんです。だから、今まで主人公になれなかった普通の女の子を主人公にして『小さな恋のものがたり』を描き始めたんです。
――デビュー作を50年以上連載するという作家さんはみつはし先生のほかにいらっしゃらないようにも思うのですが、当初から『小さな恋のものがたり』を長く描き続けたいという思いはありましたか?
みつはし 描き始めた時から長く細々と確信を持って続けたいと思っていました。たったひとりの読者でも、きっとマンガに込めた私の思いをわかってくれるに違いないという気持ちでいましたね。
――50年以上、ひとつの作品と向き合うこと。ご苦労も多かったのではないかと思いますが、実際いかがでしたか?
みつはし 締め切りが迫ってくるたびに、「もうダメ。もう描けない」と思って。でもドタン場になると、自然とアイデアが出てくるんですよ。私は真夜中から明け方にかけて元気が出て、アイデアも次々と出てくるタイプなんです。
――『小さな恋のものがたり』は、1972年に連続テレビドラマ【※注1】[注1]、1984年にテレビアニメ【※注2】[注2]が放送されましたが、ご自分の作品が映像化されることに対しては、当時どのように感じていましたか。
みつはし 私はマンガを描くことは大好きだったけれど、テレビに出ることは絶対に嫌だったんですよね。マンガも、もちろん作者本人も……。人気が出るということにも無関心でした。出版社にとっては困ることだったかもしれませんが、マンガを宣伝されるのも、便せんや文具にキャラクターを使うのも好まなかったですね。ただただ、マンガを見てほしいという思いだけでした。
- 注1 1972年7月8日から9月30日まで全13回が日本テレビ系列で放送された。ヒロインのチッチを岡崎友紀、サリーを沖雅也が演じた。
- 注2 1984年3月20日、TBSにて『小さな恋のものがたり チッチとサリー初恋の四季』というタイトルで放送。