話題の“あの”マンガの魅力を、作中カットとともにたっぷり紹介するロングレビュー。ときには漫画家ご本人からのコメントも!
今回紹介するのは『このマンガがすごい! comics ケン月影 官能劇画傑作選』
『このマンガがすごい! comics ケン月影 官能劇画傑作選』
ケン月影 宝島社 ¥590+税
(2017年5月17日発売)
アラフォー以上の殿方が耳にすれば、必ずや下半身がムズムズする呪文のような文字列、それが「漫画エロトピア」だ。『火垂るの墓』でおなじみの作家・野坂昭如が「エロスのユートピアたれ」と命名した「エロトピア」は、1973年に創刊。ふくしま政美、上村一夫、山松ゆうきち、かわぐちかいじ等、そうそうたる執筆陣で一時代を築いた(2000年に休刊)。
そんな伝説的な成人向け劇画誌で活躍していたのが、ケン月影である。昭和16年(1941)11月生まれ、御年75歳を迎えても現役バリバリであり、「ビッグコミック」にて『荷風になりたい~不良老人指南~』(原作・倉科遼)を連載中。唯一無二の濃厚な劇画タッチは、まったく衰えていない。
そしてこのつどケン月影がこれまで発表してきた江戸を舞台にした官能時代劇の傑作選が、「このマンガがすごい! comics」から登場。萌え萌えとは一線を画す熟れ熟れの美女たちが肉欲に溺れ、肉欲の餌食になる。
序盤の5つのエピソードは、ケン月影・官能時代劇の代名詞的存在でもある「薬研(やげん)のお銀」シリーズ。薬剤店「白銀」を営むお銀が、女を泣かす卑劣漢を始末していく痛快譚だ。
盲目の按摩の復讐劇「邪剣肉勝負」、変態たちの宴がえげつない「人情肌合わせ」、拷問フィーチャー「七変化の女」、心中の失敗が招く悲劇「冥土にかかる痴獄橋」、どんでん返しが楽しい「穴鮨で壺がさね」……。江戸文化の暗部から驚きのミステリーまで、多彩な展開で魅せてくれる。もちろん読者が期待するところの“くんずほぐれつ”もボリュームたっぷりだ。