6月16日、新宿歌舞伎町のキャバクラ店で“不当な”飲食代金を取り立てたとして、東京都ぼったくり防止条例違反の容疑で6店舗11人の従業員が逮捕された。
このニュースをよくよく読んでみると、どうやら路上の「客引き」で提示した金額と異なる請求をしたのが問題となっている模様だ。
しっかし、なんで客引きにホイホイついていっちゃうかなー。
いま新宿区は条例で客引き行為を全面的に禁止している。それでも客引きに「よっ大将、スケベ。若い娘がお待ちしてますよ」とかなんとか声をかけられちゃうと、「お、おう」なんて鼻の下を伸ばして「いざキャバクラ」状態になってしまうものらしい。いったいキャバクラの魅力って、なんなんだ!?
今日もちょっと強引だが、キャバクラを扱ったマンガで見てみよう。
『嬢王』第1巻
倉科遼(作) 紅林直(画) 集英社 \505+税
(2010年7月12日発売)
『舞姫 ~ディーヴァ~』第1巻
倉科遼(作) 大石知征(画) 小学館 \505+税
(2006年10月30日発売)
華やかな“夜の世界”を舞台にしたマンガといえば、『夜王』(作画:井上紀良)や『女帝 SUPER QUEEN』(作画:和気一作)で有名な原作者・倉科遼による作品群だ。
キャバクラを題材にした作品には『嬢王』(作画:紅林直)と『舞姫 ~ディーヴァ~』(作画:大石知征)がある。
『嬢王』では父の借金返済のために箱入り娘がキャバ嬢になり、『舞姫』では令嬢がキャバ嬢になって父の敵討ちを誓う。
どちらの作品も、自分とは無縁だった世界で試練を乗り越えてお家再興や復権をめざすという物語構造になっており、貴種流離譚の類型といえる。
キャバクラという現代ならではの世界を舞台にしながら、神話の時代から脈々と受け継がれてきた伝統的な物語形式がベースとなっているところが倉科水商売ワールドの特長なのである。
『北欧女子オーサが見つけた日本の不思議』
オーサ・イェークストロム KADOKAWA/メディアファクトリー \1,000+税
(2015年3月6日発売)
なお、キャバクラは日本独自の文化らしく、外国人にはよくわからないようだ。
オーサ・イェークストロム『北欧女子オーサが見つけた日本の不思議』には、スウェーデン人の作者がキャバクラにつれていかれるエピソードがあり、外国人から見たキャバクラのイメージが描かれている。
そこで作者がキャバクラにカウンセリング的側面を見出しているのが、興味深い。ということであれば、日本独自の文化であっても、海外進出の可能性もあるのではないだろうか。
『インドでキャバクラ始めました(笑)』第1巻
沼津マリー 講談社 \610+税
(2014年9月22日発売)
実際に海外(インド)でキャバクラを営業した作者によるコミックエッセイが、沼津マリー『インドでキャバクラ始めました(笑)』だ。
作者経営の「クラブマリー」は在インド日本人をターゲットにしていたので少し事情は異なるが、文化や宗教のローカライズさえクリアすれば、どの国でも営業できるのがキャバクラの強み。老人介護のビジネス・スキームをこれから高齢化する国に輸出するよりは、いますぐ外貨獲得が狙えそうではないだろうか。
そう、「キャバクラ輸出」はビジネス・チャンス! あとは現地女性の「社員教育」が課題となるが、そこは国策として人材教育をすればいいじゃない。
『都立水商!』第1巻
室積光(作) 猪熊しのぶ(画) 小学館 \505+税
(2003年10月4日発売)
すると『都立水商!』(原作:室積光、作画:猪熊しのぶ)みたいに「水商売教育を専門とする公立高校」なんてものが実現するかもしれない。
『都立水商!』は、現実にはありえない設定(水商売学校)のなかで普遍的な人間ドラマが描かれるところがおもしろい。
しかし、「社会的要請の高い分野」のために大学の人文科学系学科を廃止するようなアホな国がもしこの地上に存在するなら、「キャバクラ輸出」の気運が高まったあかつきには、都立どころか国立のキャバクラ学校ができたっておかしくない。
キャバクラ立国。まさしく「いい国つくろうキャバクラ幕府」。
「MANGA」や「KARAOKE」のように、「KYABAKURA」が世界共通語になる日も近い!?
<文・加山竜司>
『このマンガがすごい!』本誌や当サイトでのマンガ家インタビュー(オトコ編)を担当しています。
Twitter:@1976Kayama