『純潔のマリア exhibition』
石川雅之 講談社 \560+税
(2015年1月7日発売)
今年1月からアニメ版が放映開始する『純潔のマリア』。
『もやしもん』の石川雅之が、中世ヨーロッパを舞台に、淫魔やドラゴンを送り込み人間たちの戦争を混乱させる魔女・マリアを描いた作品の外伝。マリアとマリアが関わった人々との、本編では語られなかった出会いや、その後の物語が収録されている。
ビブの過去を描いた物語では、あのセクシーキャラが昔はこんなにおてんばだったとは……と衝撃。彼女がマリアに妙に好意的だった理由がうかがえるエピソードもあり、ほほえましい。
エゼキエルが来てからの森での日常を描いた物語は、彼らのなんてことのない会話のやりとりがバカバカしくも癒される。
ジョセフとマリアの出逢いの物語は、ぎこちなくも恋の予感を秘めた2人の初々しい姿がたまらない! まじめ一辺倒かと思いきや、ジョセフくん、じつは狙ってたのね、とニヤリ。
エゼキエルとミカエルが偶然出会う話では、会話の端々からマリア一家が幸福な暮らしをしている様子がうかがえ、じんわり。
ジョセフと結ばれ、魔力を失ったマリアだが、その魔力は果たしてどこへ行ったのか――という秘密もサリゲに示されている。
人間には誰しも、現在に連なる過去がある。それはマンガのキャラクタも同じなわけで、これを読んだ後、改めて本編を読み返せば、以前はさらっと読み流していた彼らの言動に「あー、だからこうなのね」と必然性を確認。『純潔のマリア』の世界がさらに立体的に深みを増して楽しめるはず。
『マリア』ファンは、とりあえず必読!
<文・井口啓子>
ライター。月刊「ミーツリージョナル」(京阪神エルマガジン社)にて「おんな漫遊記」連載中。「音楽マンガガイドブック」(DU BOOKS)寄稿、リトルマガジン「上村一夫 愛の世界」編集発行。
Twitter:@superpop69