ワイド復刻版『国民クイズ』上巻
杉元伶一(作)加藤伸吉(画) 太田出版 \1,280+税
さて、問題です。日本のクイズ番組で、もっとも長く続いている番組といえば?
その答えは、日曜午後の名物番組で、1975年にスタートした『パネルクイズ アタック25』(ABCテレビ制作・テレビ朝日系)。本日4月6日は、『アタック25』が放送を開始した日だ。
同番組のフォーマットになっているのは、オセロゲーム。早押しクイズに正解して25枚あるパネルを自分のカラーで埋めていき、一番多くパネルを取った参加者が勝ちとなる。
出演者は4名の参加者と、ほか出題者と司会者。初代司会の故・児玉清が印象深いが、二代目に浦川泰幸アナウンサーを挟み、この春から谷原章介が三代目のMCを務めている。
現在では民放唯一の視聴者参加型クイズで、今年で放送40周年。国民的な番組といえそうだが、では、ここでもうひとつ問題。
その名もまさに『国民クイズ』と銘打たれた、1993年発表の加藤伸吉(ART)と杉元伶一(STORY)が描き出す「クイズ番組」といえば?
その答えは、作品の舞台となる「近未来の日本のルール」そのもの!
国家が放送する人気番組にして、番組自体が行政・司法・立法、憲法も凌駕する最高機関ということになる。
本作における日本では、民主主義ではなく全体主義が採らされていて、その要となるのが“国民クイズ”だ。この番組のクイズに勝ち進んだ者の決定が、すなわち国家の決定となって実現されていく。
たとえば、8つの金融機関から借りた3億の借金をチャラにして、特に取り立ての厳しかったサラ金社長を殺すという無茶な望みも、クイズに勝ちさえすれば実現して、実際に実行されている。個人の身勝手な欲望を国家が超法規的に叶えてくれるのだ。
番組の顔は、司会者のK井K一。人気者の彼自身もかつての番組参加者で、罰ゲームの強制労働として、囚人の立場のまま劇団員だった過去をいかして司会をやらされている。
そんなK井に、国民クイズ体制の崩壊を企てる工作員が接触して……。
復刻もされるなど、長く読み継がれているカルト的にしてカリスマ的人気の名作。そのラストは衝撃のひと言だ。
最後に、もうひとつ問題。
もし本当に“国民クイズ”があったら、あなたは参加する!?
<文・渡辺水央>
マンガ・映画・アニメライター。編集を務める映画誌『ぴあMovie Special 2015 Spring』が3月14に発売に。映画『暗殺教室』パンフも手掛けています。