『ガールズノート』第1巻
KUJIRA 集英社 \550+税
(2015年3月19日発売)
青年誌連載で、女性の生態を描いたショートストーリーと来たら、男性読者がニヤニヤするような作品を想像してしまうはず。
しかし、KUJIRA『ガールズノート』を読んで出てしまうのはニヤニヤではなく、ニマニマ。エッチな描写もありつつ、なんだかほほ笑ましく読めて、読めば和んだ気分にさせられる作品に仕上がっているのだ。
主人公は、全員が全員、なんだか見た目とは裏腹の中荒井家の三姉妹。
長女でOLのサユリは、一見地味でまじめそうながら、じつはひとりHが大好き。同僚男性が口にするなにげないひと言を「おかず」に、夜を楽しんでいる。
次女でゲームセンター店員のスミレは、豊満な胸で男の子たちの視線をさらっているが、じつはだれともつきあったことのない処女。しかも「揉まれるより揉んでみたいなー」と、他人の胸に興味津々だ。
三女で女子高生のスミレは、うぶでかわいらしい見た目に反して、30代のサラリーマンの彼氏と恋愛中。ただ、あれこれ夢想はしていてもまだまだ発展途上中で、それだけに奥手だったり、大胆だったり!?
そんな三姉妹の他人に言えないモヤモヤが描かれているのが、本作。
絵柄も語り口も軽やかでかわいらしくて、三姉妹が三姉妹とも不器用というのが、ニヤニヤではなくニマニマの癒されポイントなのだ。
なんだか中2男子のような内面の三姉妹には、女性読者も男性読者もそれこそニマニマ共感してしまうのでは?
性の本音と言われたときの男性読者の居心地の悪さも、男性誌でそれが語られるときの女性読者の居心地の悪さも皆無。ゆるりと楽しめながら、それでもなんだかじっくり考えさせられたり、キュンとさせられたり。
もちろん、ニヤニヤの要素も満載。個人的に一番グッときたのは、「好きな人に好かれてるってしるし欲しいな~」と考える三女が、キスも身体の関係もまだの彼氏にせがんで、手にキスマークをつけてもらうという場面。
いろんな意味で、マニアックでフェティッシュ。直情的なエロさやおもしろさだけでなく、間接的なセクシーさやせつなさもあるのも、男女とも楽しめるポイントで、本作の魅力だ。
<文・渡辺水央>
マンガ・映画・アニメライター。編集を務める映画誌『ぴあMovie Special 2015 Spring』が3月14に発売に。映画『暗殺教室』パンフも手掛けています。