『おはよう、いばら姫』第1巻
森野萌 講談社 \429+税
(2015年4月13日発売)
入院する母のかわりに、家事に育児(妹の世話)にと励む主人公・美郷哲。
クラスメイト相手にも宿題を見せては100円、髪を結っては100円と、やや守銭奴(?)のきらいはあるが、それも思うところあってのこと。
彼は家族思いで心優しい、ちょっぴり恐がりの高校生だ。
そんな哲が、なりゆきで“家政夫”のアルバイトをすることに。派遣先は、子どものころから知っている“丘の上のお化け屋敷”。
広い庭の奥にある小さな離れには、「奥様」からは近づかないように言われている……。
ある日、哲は“屋敷の窓からこちらをのぞく長い髪の少女”に遭遇。
いろいろあって家から出させてもらえないのは本当だと言うが、話してみれば快活でよく笑うキュートな女の子。
が!! 次に会ったとき、彼女の様子は豹変。どこか寂しげで無表情な別人になっていた……。
家から出られないというこの美少女が、多重人格? 彼女にいったいどんな秘密があるというのか?
ミステリアスなストーリー展開にも期待のかかるところながら、注目すべきはこれが初連載とは思えぬ著者の画力。
ヒロイン・空澤志津の同じ顔を、多様な表情に描き分け、読者を魅了する。
またそんな志津に、ある時は手をさしのべ、ある時は振りまわされる哲のキャラクターも、女子ウケ必至。
彼はこの先頼もしいヒーローとなるのか、それとも振りまわされて終わるのか?
しばらく哲と一緒に、志津との不思議な時間を過ごしてみようではないか!
<文・藤咲茂(東京03製作)>
美酒佳肴、マンガ、ガンダム、日本国と陸海空自衛隊をこよなく愛し、なんとなくそれらをメシのタネにふらふらと生きる編集ライター。