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彼氏なし、お金なしのアラサー主人公と、そんな姉とは対照的に要領よく奔放だけど純粋な妹。男って、結婚って、女の幸せって何!? 同世代の女性読者から熱い支持を受け「このマンガがすごい！2014」オンナ編でランクインを果たした『おんなのいえ』はどのように誕生したのか？ 現在３本の連載を抱える大人気漫画家の鳥飼茜先生を直撃した！
鳥飼茜
大阪府出身。
2004年に「別冊少女フレンドDXジュリエット」(講談社)でデビュー。その後、『ドラマチック』『わかってないのはわたしだけ』（ともに講談社、現在は絶版）『おはようおかえり』（講談社）。
現在は、「BE・LOVE」（講談社）にて「このマンガがすごい！2014」オンナ編にランクインした注目作『おんなのいえ』を、「モーニングtwo」（講談社）にて『先生の白い嘘』を、さらに「フィール・ヤング」（祥伝社）にて『地獄のガールフレンド』を連載中。
母と娘、それぞれが独立した「おんな」同士ならではの関係性を描きたくて
――姉妹とその母、三者三様のキャラが魅力的。3人の女たちの生き方、考え方が表れるひとことに随所でハッとさせられる『おんなのいえ』についてお伺いしていきたいと思います。そういえば女性誌での連載はひさしぶりでしたよね。
鳥飼 はい、しかも「BE・LOVE」（講談社）に描くのは初めてで。お話をいただいて、まず「『生徒諸君！』[注1]が載ってる雑誌に連載するのか！」とビビりましたね（笑）。アシスタントさんにも「うちのお母さんがずっと読んでます！」と言われたりして……大御所の先生がたくさん描かれてる雑誌で、読者の年齢層も幅広いですから、最初はどういう作品を描いたらいいのか考えてしまいましたね。
――そこで姉妹と母親を主軸にすると決めたきっかけは？
鳥飼 私も担当さんも2人姉妹だったこともあって、まず話にのぼりまして。姉妹のキャラクターをベースに、そこにお母さんをプラスすれば、幅広い世代の読者の方に受けいれていただけるかなと。よこしまな考えで（笑）。
――では実際に、鳥飼先生の「姉妹と母親」関係が反映されていたりするのでしょうか。
鳥飼 そうですね。ほとんど私のうちの話といってもいいくらい。あ、うちは父親がいるんですけど……なんというか父親はキャラクター的に不在な感じだったんですね。
――男女比１対３の家はそうなりがちですよね。
鳥飼 ……だと思います。お父さんの存在感が強い家では、お母さんって『お母さん』としての役割が比較的強くなっちゃうのかもしれない。でも、そうでない家の場合は、お母さんにも「ひとりの女の人」という部分が残るんじゃないかな。あくまで私感ですが。私の家族を振り返ってみて、自分という女、妹という女、お母さんという女がそれぞれに独自の存在になっていたので、そういう観点から描いたらおもしろいかなと思いました。
――キャラクターありきで始まった物語なんですね。
鳥飼 当初、ストーリーはほとんど決めていなかったんです。正直、ここまで連載が長く続くと思っていなかったこともありますが。ベタな言い方になりますけど、2巻くらいからキャラクターが勝手にわーっと動き出したりするようになって（笑）。そこからは勢いのままに描いている感じです。
――それは意外でした。かなりストーリーの展開を緻密に考えていらっしゃると思っていたので。
鳥飼 えっ、そう見えますか？
――マンガでは街でばったり会うとか、じつはこの人たちがつながっていたというような「偶然」がよくありますよね。それが『おんなのいえ』はじめ鳥飼先生の作品では、すごく自然に感じるんです。
キャバ嬢のバイトをしていた時に出会い、いい雰囲気になった川谷。再就職先でまさかの再会。これはやっぱり運命！？と思っていたら……。
鳥飼 そう思っていただけるのはありがたいです。
――偶然も「現実にありそう」と感じる理由を考えた時、キャラクターとその人がいる場所との親和性が高いからかな、と思ったんですけど。
鳥飼 あ、場所についてはちょっと考えてるかもしれません。たとえば新宿に行く途中に、ここを通るとか。どういうルートを通るか、どんな地域のどんな店を選んで入るかってキャラクターに結びついていますから、偶然の出会いってじつは必然だったりするのかなと思います。
――また、偶然の連鎖が作中で提示されていく順番もキモだと感じます。たとえば、すみ香がルノアールで、有香の元カレの松谷が女の子といっしょにいるのを見かけて、ぶん殴りますよね。でも、そのことをすみ香は有香にすぐには報告しないじゃないですか。
新しい彼女を連れた元彼とばったり会ったことで有香はさらに傷つくが、妹の優しさを知り少しだけ前向きになることができた。
――しかも、その光景を見ていた男が街ですみ香に声をかけて、また新しい関係が生まれていくというのもとてもスムーズに感じます。
妹のすみ香にひとめぼれ（？）したマコちゃん。2人の関係は今後の大注目ポイントのひとつ！
鳥飼 それ、めっちゃたまたまできた展開なんです。最初から考えてたわけではなくて……。描きながら思いついて、いけるんじゃないかと。
――読み手としてはすごく先まで考えて描いているものだと！ こういう時、前にさかのぼって読むのが楽しいんですよね。
鳥飼 私も「うまいことつながった！」と思う時は楽しいです（笑）。たとえばエピソードA、B、Cを描いて、そこにまったく違う事件Xを入れたいな、と思うとします。お風呂に入ったりご飯作ったりしてる時に「どうやってXを自然に導きだすか」をぼんやり考えているんですね。ありもののA、B、Cのなかに「エピソードDを置いたら事件Xがうまくはまる」みたいなのがパッと思いつく瞬間があって、おもしろいです。
――やっぱり考えてるじゃないですか（笑）。
鳥飼 でも、あとからですよ（笑）。1回描いてしまったエピソードや事件は「すでに起こってしまった事実」なので。その出来事をいかに、これから描くことに引きつけるか、そのために考えるんだと思います。
- 注1 『生徒諸君！』 庄司陽子による学園マンガの傑作。1977～1985年に『週刊少女フレンド』（講談社）で連載され、実写映画化、ドラマ化、アニメ化もされた。現在、『生徒諸君！－最終章・旅立ち－』を「BE・LOVE」（講談社）にて連載中。
