まわりがあまり見えていない姉と、仕切っているつもりの妹と
――常々『おんなのいえ』には名台詞が多いと感じているのですが、先生ご自身、お気に入りの台詞はありますか?
鳥飼 川谷さんが「男は別れた女の成長なんかひとつも興味ないよ」というところですかね。これは私が考えたもので……男の人が実際そう思ってるかはわかりませんけど、おおむね正解じゃないかなって思っていて。それを活字として自分に見せられたことがよかったかな。
――自分に向けて書いた言葉でもある?
鳥飼 これは完全にそうです(笑)。ほかにもあるかもしれませんが。
――ハッとする言葉がたくさんありますから、『おんなのいえ 名言集』が作れると思いますよ!
鳥飼 そうですか? なんだか恥ずかしいですね(笑)。
――こうして見ると、妹のすみ香は、有香にガンガン突っこんでますね。
鳥飼 血がつながってる分、友だち以上にぶっちゃけトークができるのが姉妹のよさかなと思うんです。まあ、ケンカになることもありますけど。私も、わりと自分の妹とはなんでも赤裸々に話す方だったので。
――妹さんとは今も仲良しなんですか?
鳥飼 今、妹はカナダに住んでるんですけど、たまにスカイプで話したりします。内容は10代の頃とほとんど変わってないですね。バイト先の人にいじめられてるとか言ってますよ(笑)。
――妹さんとの関係性は、かなり作品に反映されている?
鳥飼 はい、そうでしょうね。やっぱり、妹ってかわいいんですよね。すみ香のこともかわいいなと思って描いてます。
――有香はしっかりしていて堅実だけど、夢見がち。すみ香は姉に比べると奔放なようで古風。ちょっと生意気で観察眼の鋭いところも下の子っぽいですね。
鳥飼 うちの妹を見ていると「私がこんなに周囲のことを考えているのに、みんなはなんなの?」みたいに怒ってることがたびたびあって……それがちょっと滑稽なんですよ、私から見ると(笑)。どうやら表には出さないけど、本人はまわりがうまくいくように配置してるみたいで。
――すみ香は有香に対して厳しいことを言う一方、とても愛情深いですよね。有香の元カレを殴ったシーンしかり、合コンで有香がイヤな想いをした時には啖呵を切って席を立ったり。
鳥飼 ここまでやってくれたら、頭が上がりませんね(笑)。たしかに下の子に比べたら、長女はあんまりまわりが見えてないと思います。自分のことばっかり考えてきたのかも。成長過程でそれが許されてきたんじゃないかと思うんですが。あ、これはあくまで自分を振り返っての分析ですので、違ってたらすみません!
――それに近いことを川谷さんが有香に言うシーンもありましたね。
――そして、この物語はお母さんのツルのひと声から始まっていますね。フラれて恋人との同居を解消した有香を心配して、すみ香といっしょに住むことを命じるという。
鳥飼 私も、大人になった今でも母には逆らえないです。逆らってるつもりでも、母の『こうしたほうがいいんじゃないの』というひと言が呪いのように後々までつきまとって、自分の行動を制御している気すらします。
――なるほど……思い当たりますね。逆らったつもりでも根本的には逆らいきれないという。
鳥飼 お母さんというのは基本、自分の幸せをいちばん願ってくれている人だと思うんです。その人が言う言葉にはそれなりの根拠があると、潜在的に感じてるんですよね。ですから、発言力の強い母ではあっても、権力者のように見えないように気をつかって描いているつもりです。
――子どもを自分の思うように操ろうとする親でないことは、十分に伝わってきます。「母と娘」として、ときには「ひとりの大人の女同士」として話せる関係性が、なんとも素敵だなあと思ってしまいます。
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取材・構成:粟生こずえ
撮影:辺見真也