「失敗してもそこで終わりじゃない」と伝えたい
――さきほど、キャラクターありきで作品が動いていくとおっしゃいましたが、キャラクターの経歴や性格はどの程度作りこんでいるのでしょう。
鳥飼 何が好きで何が嫌い、みたいな細かい設定は用意していないですね。「このキャラクターにこんな過去があった」といったことも最初からは決めてないですし。後々に出てくるのは、私自身がキャラクターを知っていく過程での必然なのかもしれませんね。
――2巻あたりからキャラクターが動き出したというのは、何かきっかけがあったのですか?
鳥飼 1巻でぼんぼん事件を起こしておいて……だんだんとその理由がわかってきたからかな? なんでそんなことが起こったのか、私も納得したいんですよ(笑)。
――たしかに1巻は冒頭から激しいですよね。有香がフラれるところから始まりますが、このシーンがいきなり厳しい! グサッとくると同時に、読み手としては真実を突きつけられる快感でもあって。こういうのが、鳥飼先生の描きたいのではないかと思っているのですが。
鳥飼 そうかもしれません。あの、すごくぶっちゃけて言えば、私自身これに近い経験があるんですよ。21、22歳頃のことなんですが、いまだに夢に出てくるくらい。「なんであの時相手の気持ちに気づかんかったんやろ」とか、今でも考えてしまう。だからわりに女の人を主人公に描くとなると、大失恋ベースで始めてしまうんでしょうね。うまくいってラブラブみたいな話がない(笑)。
――やはり「キャラクターに対して納得したい」という気持ちの表れでもあるのでは?
鳥飼 人生では完全に安定してるって思ってたところを足元からガラッとすくわれるようなことが起こる、というのを知らしめたい気持ちがあるのかも。
――それはネガティブなものではないと感じますよ。
鳥飼 まあ、いじわるな気持ちもちょっとはあります。でも、そこからでもどうにかうまく立ち直っていけるって言いたい部分もあります。失敗したからってそこで終わりじゃないから違う方向に歩いていけば光は見つかると。その両方を描きたいんです。