日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは『どっきんロリポップ 全部!』
『どっきんロリポップ 全部!』
井沢まさみ 復刊ドットコム ¥2,750+税
(2015年8月20日発売)
少年マンガ誌でラブコメが流行しはじめたのは80年代前半のこと。その先鞭をつけたのは1978年より「週刊少年マガジン」で連載された『翔んだカップル』(柳沢きみお)と言われている。
さて、少年マンガならではのラブコメの味つけといえば、もちろんちょっぴりエッチなシーン。
80年代、少年マガジン系の雑誌ではこのエッセンスをドンと真ん中にすえた“エッチ・ラブコメ”の名作が続々誕生している。『Oh!透明人間』(中西やすひろ)、『ハート▽キャッチいずみちゃん』(遠山光)、『いけない!ルナ先生』(上村純子)……そして本作『どっきんロリポップ』。多くの読者がドキドキした幻の名作が、関連作、イラスト、エッセイ、描き下ろし4ページを加えて復刊された。
ある日、いじめられていた犬を助けた中学2年生の智子。なんとその犬は神様で、智子は瞬間移動できる超能力を授かるのだが……これがなかなか使いこなすのが難しい。服を残して身体だけが移動してしまったり、ときには服だけが移動してしまったり!?
というわけで毎度、智子はすっぽんぽ? ん! しかも、何かと憧れの同級生・山本くんの前に全裸で出現するはめに。
しょっちゅう「どうも全裸の幻覚ばかり見てしまう」と、悩める山本くんの姿も笑いを誘う。あられもない智子の姿を目撃した山本くんがショックで倒れる、なんて描写も牧歌的でほのぼの。
そう、基本はあっけらかんと笑えるドタバタコメディ。
いい大人なのに山本くんを狙っている保健室の女教師、智子に惚れている硬派な不良くん、ちょっと変態ちっくな智子の幼なじみ男子など、サブキャラたちも個性的で楽しい。
無邪気に失敗をくり返すドジッ子ヒロインのかわいらしさは、発表から30年を経ても色あせない。エロいではなく「エッチ」、セクシーというより「ドッキリ」という言葉の似合うこんなマンガは、とうに大人の読者にも新鮮なトキメキを思い出させてくれるはず。
<文・粟生こずえ>
雑食系編集者&ライター。高円寺「円盤」にて読書推進トークイベント「四度の飯と本が好き」不定期開催中。
ブログ「ド少女文庫」