日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『七海の623』
『七海の623』第1巻
がっきー 小学館 ¥552+税
(2015年9月18日発売)
タイトルの「6」「2」「3」は、「右」「下」「斜め下右」のこと。テンキー配置です。
これは格ゲープレイヤーにはおなじみ、「昇竜コマンド」と呼ばれるもの。
ちょっと複雑なため、格闘ゲームをやる時の第一の関門になるコマンドだ。
格ゲーマーの少年・原田誠は、あるきっかけでメガネのクールビューティー・藤崎七海に、『ウルトラストリートファイター4』の手ほどきをすることになる。
格ゲーをプレイするには、覚えなければいけない要素がいくつもある。まずは通常技とコマンド技の仕組み。次に投げ、キャンセル技、連続技。そしてゲーム独自のシステムの使い方に間合いの取り方。
ここまで覚えるのも苦労をする。しかし対戦格闘ゲームは、ここからがスタート。
相手は機械ではない、人間だ。覚えたとおりに攻撃がすぐ当たるなんてことはまずない。同じキャラクターであってもプレイヤーごとに動きは全然違う。互いに動きを読み合って、堅実に攻めるか。はたまたギャンブルにでるか
七海はいろいろな習いごとをマスターしている、天才少女。格ゲーもすぐに、難しい技を出せるようになるほどに器用。
しかしいかに彼女が器用であっても大会では、そう簡単には勝てない。誠とともに訓練を積んで、コンピューター相手に連勝できるようになっても、だ。
その時はじめて、彼女は涙する。
格ゲー対人戦での真剣勝負は、極まっていくとスポーツに近い深みがある。
この真剣勝負に魂をかけ、練習を積んだプレイヤーたちによって、格ゲー業界は支えられている。
著者は、格ゲー業界のために何かできないか、と思ってこのマンガを描いたそうだ。
なぜ格ゲーマーは「たかがゲーム」に魂をこめているのか、読んで感じてほしい。
にしても。一昔……二昔前ならこの手の作品なら題材は「ストリートファイター2」、あるいは「ストリートファイター3」だったろうことを考えると、ウル4が題材になっていることに、おじさんは時代の流れを感じます。
<文・たまごまご>
ライター。女の子が殴りあったり愛しあったり殺しあったりくつろいだりするマンガを集め続けています。
「たまごまごごはん」