『拷問椅子探偵』
湖山倫啓 小学館 \429+税
(2014年12月18日発売)
表紙で縄を振り回している女の子……は主人公ではなく、縛られている方が主役の探偵、丸城戸至土(まるきどしど)。
普段はまったく冴えない男。しかし彼は少し強めに縛られたり叩かれたりすることで、頭脳明晰に。生命の危機にさらされたとき人間の脳は「脳内麻薬」をドバドバ出し、集中力や五感が一気に高まる。
至土は、マゾヒスティックな仕打ちを受けることで推理する探偵なのだ。
出オチ感が半端ない作品。しかし、「バディもの」として見ると、たいへんよくできている。
彼の集中力を高めるためにいじめる少女は、フルカ・古川・フラゲルム。フルカは真性のドS。至土の思考力を高めるには、じつにぴったりの人材だ。
SとM。お互い「これくらいを相手が欲している」というバランスを知り、強い信頼関係で結ばれている。
至土は、極度に攻撃を受けすぎると、ドーパミンが出すぎて容赦なく暴力をふるうようになる。もう犯罪者がどっちだかわからないくらいに、相手をぼっこぼこにしてしまう。それではまずい。
フルカは至土がちょうどよくハマる加減がわかっている。至土も、彼女が加減を知っていることを信じて身を任せる。時に事件が行き詰まるときも、2人はお互いを信じて解決する。
フルカと至土のちょっと変な関係は、1冊できれいにまとめられているので、最後まで読んでみてほしい。
ただ、事件解決の決め台詞「この事件、亀甲縛りに出来ました!」は、かっこ悪いと思います。
<文・たまごまご>
ライター。女の子が殴りあったり愛しあったり殺しあったりくつろいだりするマンガを集め続けています。
「たまごまごごはん」