このマンガがすごい!WEB

一覧へ戻る

9月29日はスコットランド・ヤード発足の日 『フロム・ヘル』を読もう!【きょうのマンガ】

2014/09/29


fromhell_s_jyo

『フロム・ヘル』上巻
アラン・ムーア(作)エディ・キャンベル(画)柳下毅一郎(訳)
みすず書房 \2600+税


近年ではボードゲームなどでもその名を知られているロンドン警視庁、通称「スコットランド・ヤード」が発足したのは、1829年9月29日。
その名前から、スコットランドに関連した組織だろうか、という印象を受けるが、じつは創設当初の本部がロンドンはホワイトホールのグレート・スコットランド広場(ヤード)に面していたということからつけられた名称であり、実際はスコットランドに関連する業務は存在しない……というのは、ちょっとした豆知識。

世界でもっとも広く知れ渡った愛称を持つこの警察組織は、探偵小説の代名詞ともなったシャーロック・ホームズ作品をはじめ、ロンドンを舞台とするあらゆるフィクションに登場する。当然、マンガの世界でも、スコットランド・ヤードに所属するキャラクターたちは、たびたび姿をあらわしている。
アメコミ界の鬼才アラン・ムーアが原作を担当した『フロム・ヘル』では、謎と血にまみれた世紀の犯罪者・切り裂きジャックの闇に挑むフレッド・アバーライン警部(実在の人物で、本作をもとにした実写映画ではジョニー・デップが演じた)が、藤田和日郎『黒博物館 スプリンガルド』では、今では都市伝説として知られる「バネ足ジャック事件」を追う主人公ジェイムズ・ロッケンフィールド刑事が、それぞれスコットランド・ヤード所属の人物として登場。
その組織描写は作品によって多種多様だが、多くは「ロンドンの平和を守るべく奮闘する組織」であり、その存在は読者にページを進ませる安心感を与えてくれる。

ホームズ作品でスコットランド・ヤードを知った読者には、ホームズとほぼ同時代のイギリスの町並みを、綿密な資料調査と執拗なまでの描写で再現した『フロム・ヘル』がおすすめだ。
だが本作は、数あるアラン・ムーア原作の邦訳コミックのなかでも、特に難解といわれている作品なので、読むのには苦労するかもしれない。また、読み終えたころには、作中の切り裂きジャックによる、哲学的とも神学的ともいえる狂気の思考に憑かれてしまうかもしれないので、お気をつけいただきたい。

もちろん、これらの作品以外にもスコットランド・ヤードが登場するマンガ作品は星の数ほど存在している。切り裂きジャックの真実を追求しようとするアバーライン警部の気持ちになって、自ら書店で探してみるのもいいだろう。



<文・一ノ瀬謹和>
涼しい部屋での読書を何よりも好む、もやし系ライター。マンガ以外では特撮ヒーロー関連の書籍で執筆することも。好きな怪獣戦艦はキングジョーグ。

単行本情報

  • 『フロム・ヘル』上巻 Amazonで購入
  • 『フロム・ヘル』下巻 Amazonで購入
  • 『黒博物館 スプリンガルド』 Amazonで購入

関連するオススメ記事!

アクセスランキング

3月の「このマンガがすごい!」WEBランキング