365日、毎日が何かの「記念日」。そんな「きょう」に関係するマンガを紹介するのが「きょうのマンガ」です。
11月8日は世界都市計画の日。本日読むべきマンガは……。
『UTOPIA 最後の世界大戦』
藤子・F・不二雄、藤子不二雄A 小学館 ¥3,800+税
本日11月8日は「世界都市計画の日」。
これはアルゼンチンの都市計画学者であるカルロス・パオレーラ教授が、1949年に提唱したもの。日本でも「都市計画協会」が1965年から日本集会を開き、講演会などを行っているとのこと。
そもそも「都市計画」とはなんぞや? と言いますと、無秩序に都市が発達して生活環境などが悪化しないよう、まずは都市の発展していく未来の理想形を想定。そして必要となる整備や規制などを行い、理想の実現に向かって誘導していくこと。
今や人口の増加した都市においては、都市計画なくして発展はありえません。
しかしマンガやフィクションにおいては、しばしば都市計画は「行きすぎた管理社会」と結びつき、最終的には主人公側に打倒されてしまうことも少なくない。
そして藤子不二雄の2人の初期作品である『UTOPIA 最後の世界大戦』も、モロにそんなテーマの作品だったりするのですが、戦後間もないマンガの黎明期とも言える時期にそんなものを描いていたとは……やはり藤子不二雄おそるべし!
たしかにタッチは手塚治虫の影響が色濃く、おおまかなストーリーも、オルダス・ハクスリーの『すばらしい新世界』に触発されたものであることが『二人で少年漫画ばかり描いてきた』で明かされているが、それとて『世界名作縮冊全集』でわずか2ページのあらすじをもとにしたもの。
それを100ページもの作品にしてしまうのだから、才能、そして情熱ともにスゴイとしか言い様がない。
ところでこの本作、「中古市場で初版本がとんでもなく高価」ということがひとり歩きしすぎている感もあるが、さいわい今は復刻版単行本や『藤子・F・不二雄大全集』などで読むこともできる“すばらしい世界”。
なので、未読の方はぜひご一読を。
そして、管理社会からはじき出された人間が容赦なく処分されるという戦慄のデストピア描写(そもそも、この内容でUTOPIAをタイトルに持ってくるセンスが超クール!)がすばらしすぎる作品ですが、最後は正しい理想郷を目指すという結末も「世界都市計画の日」に読むにはピッタリかと思います。
<文・大黒秀一>
主に「東映ヒーローMAX」などで特撮・エンタメ周辺記事を執筆中。過剰で過激な作風を好み、「大人の鑑賞に耐えうる」という言葉と観点を何よりも憎む。