『もがりの首』
森野達弥 ホーム社 \687
(2014年4月18日)
平成の妖怪漫画家・森野達弥による、久々の新刊。
不気味な仮面をつけた不死の少年・もがりを狂言回しに、さまざまな時代を生きる、人間の心の闇と復讐を描いた怪異譚である。
本作の第1話と第2話は、2002年から2003年にかけて、わずか3号のみ刊行された懐かしマンガをテーマにした雑誌「トラウママンガマガジン」に掲載されたもの。
雑誌の休刊にともない、続編は絶望的かと思われていたが、なんと初掲載から10年以上が経過した2013年、まさかの復活。新たに4つのエピソードが執筆され、単行本にまとめられた。
著者の森野は、代表作『無宿狼人キバ吉』(原作:島本高雄)のオビに記された「買って読めば面白いことが分かるめずらしい本」という、師・水木しげる御大の名キャッチコピーで、妖怪マンガファン(せまい界隈だが……)のなかでは有名だ。
「水木しげるの正統後継者」といっても差し支えないであろう、おなじみのタッチで描かれる、戦国の世から幕末・明治・昭和まで、各時代を暮らす人々の生活と、その罪と罰の描写は、恐怖とともに、どこか懐かしさも感じさせる。
もちろん、見どころは師から譲り受けた「水木タッチ」だけではない。艶のある女性キャラクター描写、大ゴマを効果的に使用したショッキングなシーンの描き方などは、著者特有の魅力といえるだろう。
また、単行本のラストに収録されている第6話「羨望」は、それまでのエピソードとは少し趣が異なるものの、読者をニヤリとさせるメタ的な展開となっている。ぜひ確認してほしい。
これを機に、未単行本化の森野の作品群を、どんどん刊行してほしいものだが……。
<文・四海鏡>
石ノ森章太郎ファンのライター。好きな石ノ森作品は『番長惑星』など。ネオライダー世代。