日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『009 RE:CYBORG』
『009 RE:CYBORG』第6巻
石ノ森章太郎(作) 神山健治(ストーリー) 麻生我等(画) スクウェア・エニックス ¥581+税
(2015年11月25日発売)
「フランソワーズ
何度君のことを忘れようと
僕は必ず君を思い出す」
『009 RE:CYBORG』を読んできた者にとって、所収の冒頭エピソードにあたる「RE:CODE 030」の009・島村ジョーと003・フランソワーズの会話は、読むだけでグッときてしまうものだ。
かつて世界の危機を救ったゼロゼロナンバーサイボーグたちが平穏な人生を取り戻していた2013年。より完成形に近いサイボーグとして改造された時の年齢から年をとることがなくなったジョーだけは、記憶をリセットすることで普通の高校生としての3年間を無限に繰り返していた。
偽りの記憶を植えつけられループする直前に彼は、記憶をリセットしようとするフランソワーズに対し先ほどのセリフを口にする。
さらに、自分だけは年をとってしまい同じ時間を過ごすことはできないと悲嘆するフランソワーズに対して彼はこう続ける。
「かまわない すぐに追いついてみせるよ
僕には加速装置がある……」
……これほどまっすぐで、またこれほど哀しい愛の告白があっただろうか?
2012年公開の劇場版映画のコミカライズである本作はこの巻で完結。それだけに序盤から名セリフ、名シーンがたて続けに展開してイッキ読みは必至なのである。
「人類は一度やり直さなくてはならない」という“声”に導かれて発生したテロ行為に始まった「彼」の人類一掃計画は、核ミサイルの発射という最終手段によってクライマックスを迎える。
封印から解き放たれ新たな使命を見つけた009は、核ミサイルを爆破するため爆薬を携えて宇宙空間に乗りだす。いちどはミサイルに取りついたものの弾頭カバーの切り離しによって宇宙空間に放り出された彼にしっかり手を差し伸べたのは、今回の事件では主義主張の違いから彼らとは袂を分かったはずの002・ジェットだった!
能力限界オーバーによるボディの崩壊に耐えながら009をけん引する002、その002をなんとか無事に地球に帰したいと願う009、地上で彼らの帰還を信じて待ち続ける仲間たち……。
最後まで息をもつかせない展開、その先にどんな結末が待っているのかは、読んで確かめていただきたい。
<文・富士見大>
編集・ライター。『THE NEXT GENERATION パトレイバー』劇場用パンフレット、『月刊ヒーローズ』(ヒーローズ)ほかに参加する。『別冊宝島2394 仮面ライダー』や「仮面ライダードライブ公式完全読本」もやってます。