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君も僕も「数字」で管理される!? マイナンバー制度に迫る、ショッカーの魔の手!! SFじゃない、これは現実(リアル)なんだぜ!

2015/11/10


複雑化する現代。
この情報化社会では、日々さまざまなニュースが飛び交っています。だけど、ニュースを見聞きするだけでは、いまいちピンとこなかったりすることも……。
そんなときはマンガを読もう! マンガを読めば、世相が見えてくる!? マンガから時代を読み解くカギを見つけ出そう! それが本企画、週刊「このマンガ」B級ニュースです。

今回は、「マイナンバー制度の導入」について。


いよいよ始まったマイナンバー制度。みんなもう通知は届いただろうか? もしかいたら、あなたの個人情報を狙い、ショッカーの魔の手が迫っているかもしれない!!

マイナンバー制度は、かつては「国民総背番号制度」の名前でも知られていた。国民ひとりひとりに固有の番号を振り、税や社会保障、災害対策に役立てていくものだ。
この制度自体は、アメリカの社会保障番号(1936年)やイギリスの国民保険番号(1948年)のように、世界中に古くから存在する。フィクションの分野では、ディストピア(ユートピアの反対語)SFで好まれた題材であり、機械(コンピュータ)が人間を支配するときに、人間を番号で管理することは「暗い未来」として示されてきた。


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『中公文庫 仮面ライダー』第1巻
石ノ森章太郎 中央公論社 ¥629+税
(1994年11月発売)

石ノ森章太郎によるマンガ版『仮面ライダー』(1971年)では、「国民を“番号(コード)”で整理しよう」と国会で審議されている。この「コード制」をショッカーの怪人ビッグマシンが乗っとり、世界支配に利用しようと企んでいたのである。それがショッカーによる「10月計画(オクトーバープロジェクト)」の全容であった。

つまりマイナンバー制度が実施されるこの「10月」こそ、ショッカーが暗躍する最高のタイミングなのだ。
ちなみに、9月27日に最終回を迎えた『仮面ライダードライブ』でも、「10月計画(オクトーバープロジェクト)」へのオマージュ的な、「人間を番号で管理する」設定が存在した。ある意味では『仮面ライダー』シリーズに共通するテーマといえるかもしれない。

じつはマンガ版『仮面ライダー』がスタートした1971年は、ジョージ・ルーカスが『THX1138』で映画監督デビューした年でもある。
この作品で描かれる未来社会は、中央集権的なコンピュータが人間を支配しており、人間はロボットを制作する家畜のような存在として扱われ、人間に名前はなく番号で呼ばれている。そして主人公の番号が「THX1138」というわけだ。

同じ年に発表された作品だが、石ノ森が『THX1138』から影響を受けた可能性は低い。というのも、『THX1138』は本国アメリカで興行的に大コケし、日本では公開されなかったからである(現在はDVDが発売中)。
同時代に生きた2人はもちろん、「機械による管理社会」という問題意識が世界中で共有されていたと見るべきだ。
とりわけキリスト教圏では、『新約聖書』の「ヨハネの黙示録」13章に「また、小さき者にも、大いなる者にも、富める者にも、自由人にも、奴隷にも、すべての人々に、その右の手あるいは額に刻印を押させ、この刻印のない者はみな、物を買うことも売ることもできないようにした」とあるように、人間を番号で管理することが世界の終末の一端として示されているので、よけいに抵抗感があるのだろう。


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『手塚治虫漫画全集 時計仕掛けのりんご』
手塚治虫 講談社 ¥563+税
(1983年2月10日発売)

1973年に少年画報社「ヤングコミック」に掲載された手塚治虫『悪魔の開幕』は、首相暗殺を題材にした作品。

日本は丹波内閣になってから戒厳令が敷かれ、メディア言論が統制され、憲法を改正して自衛隊を軍隊にし、核兵器の開発に着手するという、なかなかショッキングな舞台設定だ。
主人公の岡重明は非合法地下組織の一員になって首相暗殺を企むのだが、その準備中に職務質問をされる。そのときに「国民番号表を見せろ」と言われるので、やはりこの社会でも国民は共通番号によって管理されていることがわかる。

なお、マイナンバーの通知を受けとると、そこで個人番号カードの交付申請をしなければならない。
申請方法は、
 ①顔写真を貼った交付申請書を郵送
 ②スマートフォンで顔写真を撮影してオンライン申請
 ③勤務先企業で一括申請
上記の3通り。申請が済むと、2016年1月から顔写真付きの番号カード(公的身分証明書になる)が発行される。このような流れで、『悪魔の開幕』で言うところの「国民番号表」がわれわれの手に渡るのだが、②の方法の場合、写真アプリでデコりまくったキラキラ&デカ目写真を送ってハジかれるアホウが続出する予感。
みんな、絶対にやるなよ!


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『HUNTER×HUNTER』第11巻
冨樫義博 集英社 ¥390+税
(2001年3月発売)

生涯変わらない共通番号(マイナンバー)を使い、社会保障や税、のちには金融情報などを管理するようになると、どうしても情報漏えいの不安がつきまとう。

アメリカでは社会保障番号を悪用したなりすまし事件が多発しており、その被害額は年間5兆円! 昨年、クレジットカードの個人情報が1億3千万件以上も流出した韓国では、推定8割以上の住民登録番号が漏えいしているとも言われているのだ。
冨樫義博『HUNTER×HUNTER』の世界も、共通番号が浸透した世界として描かれる。国際人民機構データで全国民の兵歴、学歴、戸籍、国民番号などが一元管理されていて、ノストラード家のハッカーがアクセスして、幻影旅団に関するデータを検索した。結果的に、そこに幻影旅団のデータは存在せず、そこから彼らが流星街の出身であることが判明するわけだ(単行本11巻)。

いちおうマイナンバー制度の場合、国によって全情報を一元管理するわけではないので、一度の情報漏えいですべてがダダ漏れになるようなことはない。とはいえ、現実問題として、この9月末時点できちんと「安全管理措置」に対応できている事業者はまれ。

マイナンバーは「一生使う(不変)」ものであるため、情報漏えいが繰り返されると、ほかの情報との紐付けの正確性が増していく。
年金、税、社会保障、銀行は言うに及ばず、クレジット、ネットショッピングの履歴から趣味や趣向、思想信条などと紐付けされると、意図を持って情報を収集するショッカーのような集団に、個人情報を完璧に把握されてしまうのだ。

そこで、われわれがとるべき行動は以下のとおり。
 ①マイナンバーを他人に伝えない(雇用先や支払い者には伝える)
 ②申請時に写真をデコらない
 ③ショッカーに協力しない


『別冊宝島2394 仮面ライダー』はただいま絶賛発売中!!

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宝島社 ¥1,500+税
(2015年9月28日発売)

というわけで、テレビ版『仮面ライダー』と『仮面ライダーV3』を大特集した「別冊宝島2394 仮面ライダー」(宝島社)は必携の書である。
テレビ版だけでなく、石ノ森章太郎のマンガ版やデザイン画についても解説しているので、ショッカーの手口を確実に学ぶことができる。

この世に仮面ライダーがいない限り、結局は自分の身(個人番号)は自分で守るしかないのだ。



<文・加山竜司>
『このマンガがすごい!』本誌や当サイトでのマンガ家インタビュー(オトコ編)を担当しています。
Twitter:@1976Kayama

単行本情報

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