365日、毎日が何かの「記念日」。そんな「きょう」に関係するマンガを紹介するのが「きょうのマンガ」です。
4月4日はトランスジェンダーの日。「多様な性」を考えるため本日読むべきマンガは……。
『お母さん二人いてもいいかな!? レズビアンのママ生活』
中村キヨ(中村珍) ベストセラーズ ¥1,030+税
3月3日は女の子の日(桃の節句)、5月5日は男の子の日(端午の節句)。
その中間のゾロ目である4月4日は、長らく「オカマの日」と呼ばれていた。
それならば……と、性同一性障害者の自助グループ「TSとTGを支える人々の会」は、1999年にこの日を「トランスジェンダーの日」と制定した。
トランスジェンダーとは「身体の性と心の性が一致しないが、外科的手術は望まない人」(「デジタル大辞泉」より引用)。
そのほかにも性別に応じた社会で認識されている役割や、規範に収まらない傾向を含むすべての個人・行動・グループに当てられる言葉である。
オカマの日と揶揄されていた4月4日をあえてトランスジェンダーの日に選んだことには賛否両論あるが、男・女だけではとらえきれない多様な性について考えるきっかけになれば……という主旨は尊重されるべきだ。
そこで、きょうのマンガは、『お母さん二人いてもいいかな!? レズビアンのママ生活』をピックアップ。
著者の中村キヨは、女2人の凄絶な逃避行を描いた『羣青』で知られる中村珍の別名義。
中村は早くからレズビアンであることをカミングアウトしている。
そんな中村が泥酔して道端に倒れていた子持ちのアラフォー女性・サツキさんと再婚することを、知人の香奈子さん(中村の前妻“きしえさん”の同級生)に報告するところから本作は幕を開ける。
いきなり情報量が多くて混乱するが、要約すれば「主人公が好きになった人が、たまたま子持ちだった」というだけ。
そこから結婚に発展するのは本人たちの自由であり、ごく普通のこと。それが女性同士であれ、だ。
ただしサツキさんの2人の息子にとっては、なかなか難しい問題。彼らにとっては母と継母がそばにいるという環境なのだ(彼らは中村のことを「オバちゃん」と呼んでいる)。
中村とサツキさんは様々な葛藤を抱えつつ、仲よくケンカする“婦妻”であるが、なによりも子どもたちを守ることを優先している。
だから周囲に向けて安易に真実をカミングアウトするようなことはしない。
なぜなら、それは愛する息子たちが自発的に公言することだからだ。その権利はけっして奪ってはならない。
だからして当然、本作も彼らを守るためのコーティングはしっかりとなされている。そのうえで彼女たちは世間にこう問いかけるのだ。
「お母さん二人いてもいいかな!?」
あとがきにもあるが、本作は「レズビアンのカップルが困難を乗り越えて家庭を持った感動話」ではないし、ましてや「私たちの苦労を知ってください!」という押しつけがましいエッセイでもない。
様々な愛や家族の形について想いをはせることのできる人間賛歌である。
<文・奈良崎コロスケ>
中野ブロードウェイの真横に在住。マンガ、映画、バクチギャンブルの3本立てで糊口をしのぐライター。4月23日公開『アイ アム ア ヒーロー』の劇場用プログラムに参加しております。
観てね~。