『福島鉄平短編集 アマリリス』
福島鉄平 集英社 \600+税
(2014年12月19日発売)
「かつて週刊少年ジャンプで『サムライうさぎ』(2007~08)を連載していたあの福島鉄平が!?」という文脈で語られることの多い、短編集『アマリリス』。
特に話題を集めるその表題作は、母親が作った借金のカタに「へんたいのおじさん」に売られてしまった11歳の少年・ジャンが「おしごと」として女装させられ、いかがわしい大人の相手をすることに……という、たしかに少年誌ではまず考えられない内容であることは間違いない。
しかし、本作が真に衝撃的とも言えるのは、その表層部分ではなく、もっと奥底のセンシティブなところにある。
女装させられて歌を歌うだけではなく、ときには「へんたいのおじさん」に「キス」を強いられることもある「おしごと」。
その一方で、かつて同じサッカークラブにいた少年であるポールと、大好きな児童文学『ニンジャ&ドラゴン』がきっかけで急速に仲が深まっていく。
はじめはやりたくもない仕事で沈んだ気持ちが、ポールという「友だち」がいることで慰められていたが、やがて「きたないもの」にどんどん染まっていく自分によって、純真さの極みのようなポールを汚したくないという気持ち、そして「嫌われたくない」という思いで揺れることとなる。
さらに、ポールが「立派なオトナ」と信じている『ニンジャ&ドラゴン』の作者が、じつはお店に通う常連のなかでも特にスジの悪い客(オマケ解説によると、締切のストレスから子どもをイジメに来ているとか……)だと知り、複雑な感情に拍車がかかることに。
そうしてしばらくはポールと距離をおいていたジャンだが、ある噂を耳にしたことをきっかけに、本当の自分の姿をさらけ出す。