日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『ヤミアバキクラウミコ』
『ヤミアバキクラウミコ』第1巻
丈山雄為 集英社 ¥438+税
(2016年3月4日発売)
黒髪セーラー少女が、刀を持って異形をぶった切る。
多くの作品で用いられてきたこのモチーフ、やはりマンガのモノクロ画面映えがよく、美しい。
この作品で少女が刻むのは、人のトラウマだ。
人間が嫌い、という無口な少女、宵野闇子(よいの・やみこ)。
基本的には、彼女が心の傷を抱えた人のもとに行き、相手の心のなかに入って、苦しみを解決していく、という話の流れ。
具現化された心の闇「陰胎(トラウマ)」をたたっ斬り、なかに潜む陰獣(ネガティブ)を喰らう彼女。
描かれる陰胎は、人の不安を形にしたもの。極めて不気味だ。
最初に登場する須川シュンは、小学校時代いじめられている女の子を正義感で助けたことがある。
ところがそれ以降、彼もまたいじめられるようになった。
女の子たちが徒党をなして、嘲笑しながら攻め立てる。彼は群れなす女子に恐怖をいだき、人に関わることへの不信を募らせて育っていった。
だから、シュンの心の中にある陰胎は、小学生時代の教室で笑う女児の姿をしている。
おもしろいのは、これを闇子が喰らってみんなが「トラウマから解放された状態」になれる、とはかぎらないことだ。
シュンはたまたま、心が強い少年だった。だから心の闇を晴らして、闇子とともに立ち向かえた。
だが心がそこまで強くなく、トラウマの度合いが深すぎる人間の場合、心はあっさり壊れて、埋められない穴が開いてしまう。
父親にレイプされた少女の陰胎描写と、彼女の心の負荷の「どうにもならなさ」は、ぜひ読んでみてほしい。
トラウマは、そりゃあ晴らしてほしい。
とはいえ単純に晴れた・晴れないというジャッジはできないし、その人間の心が強い・弱いと決めつけることも第三者にはできない。
闇子は宿主の心の傷をかわりに背負いながら、正しいのかわからない戦いを続ける。
<文・たまごまご>
ライター。女の子が殴りあったり愛しあったり殺しあったりくつろいだりするマンガを集め続けています。
「たまごまごごはん」