日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『異世界居酒屋「のぶ」 しのぶと大将の古都ごはん』
『異世界居酒屋「のぶ」 しのぶと大将の古都ごはん』第1巻
蝉川夏哉(作) くるり(画) 宝島社 ¥690+税
(2016年4月20日発売)
クールな大将・矢澤信之とキュートな看板娘・千家しのぶが、京都の街中にひっそりと開店した和風居酒屋「のぶ」。ところが、なぜか入口がファンタジーな城壁都市につながってしまい――!?
「このマンガがすごい!WEB」にて好評連載中の飯テロファンタジーが、待望のコミックス化。
原作のライトノベルはシリーズ累計で10万部オーバーのスマッシュヒットを記録。先行してコミカライズされたカドカワコミックエース版(作画・ヴァージニア二等兵)は早々に重版出来と、これまた絶好調である。
本作は蝉川夏哉による完全描きおろしストーリーを、ライトノベルシリーズの挿絵を担当する公式イラストレーター・くるり(転)が作画した新しいバージョンだ。
第1話が原作の前日譚になっており、初めて「のぶ」ののれんをくぐる読者でも戸惑うことはないのでご安心ください。
ここで「のぶ」の入口が直結してしまったアイテーリアについて少し説明しておこう。この街は魔法使いが跋扈するような想像上の世界ではなく、城壁に囲まれた中世ヨーロッパ風の古都。
エール(ビールの一種)のジョッキを持ちながら「プロージット!(ドイツ語で乾杯)」と言ったり、ソーセージやザワークラウトが出てきたりすることからも、15世紀前後のドイツ周辺に似た文化を持っているようだ。
そんな日本の食文化など知るよしもない人々が、うっかり(?)開店してしまった「のぶ」にやって来ては、聞いたこともないメニューに挑戦し、舌鼓を打つ。
おもしろいのは、おでん、スキヤキ、てんぷら、ナポリタンなど日本独特のメニューはもちろん、彼らが意外なところに反応を示す点。
たとえばキンキンに冷えたビールは「冷たい」という部分に異常反応。冷蔵庫を持たない彼らがふだん飲んでいるエールは、常温なのだ。
この冷たいエール(ビール)の通称は「トリアエズナマ」。これは、しのぶが衛兵のニコラウスに「とりあえず生だけ先にお持ちしますね」と日本式の接客をしたことがきっかけ。
すぐに常連客となったニコラウスが固有名詞として「トリアエズナマ」を広めていったのだろう。そもそもなぜ日本語で会話できているのかは不明だが……(ちなみにメニューの文字は読めない)。
「のぶ」で出されるものは和洋中華、なんでもありの家庭的な料理ばかり。
その優しい味は、時空を超えて人々に温かい気持ちを届ける。
もはや家族同然となってきたアイテーリアの人たちの笑顔を見るために、大将としのぶは今日も「のぶ」に明かりを灯すのだ。
コミック特典情報
とらのあな様
・くるり先生描きおろしクリアファイルプレゼント
・くるり先生描きおろしイラストカードプレゼント
メロンブックス様
・蝉川先生描きおろしssペーパー『バニラアイスのパンケーキ』プレゼント
ゲーマーズ様、COMIC ZIN様
・蝉川先生描きおろしssペーパー『古都のパフェ』プレゼント
書泉グランデ、ブックタワー様
・くるり先生描きおろしペーパープレゼント
・複製原画展開催
・サイン本販売
※すべて数に限りがございます。品切れの際、ご容赦ください。
<文・奈良崎コロスケ>
中野ブロードウェイの真横に在住。マンガ、映画、バクチの3本立てライター。4月23日公開『アイ アム ア ヒーロー』の劇場用プログラムに参加しております。
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