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『異世界居酒屋「のぶ」』第1巻 蝉川夏哉(作) ヴァージニア二等兵(画) 転(キャラクター原案) 【日刊マンガガイド】

2016/01/29


日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!

今回紹介するのは、『異世界居酒屋「のぶ」』


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『異世界居酒屋「のぶ」』第1巻
蝉川夏哉(作) ヴァージニア二等兵(画) 転(キャラクター原案)
KADOKAWA ¥580+税
(2015年12月26日発売)


いかにもな中世ファンタジー風の城壁都市・アイテーリア。
怠け者の衛士が友人にすすめられるまま、のれんをくぐればそこは和風の居酒屋「のぶ」。意味がわからないまま唱える呪文、トリアエズナマ!

これこれ、こういうのでいいんだよ。

現代社会の知識やスキルを持ちこみ向かうところ敵なしの異世界チート転生もの×深夜に視聴すると明日の体重がヤバい飯テロ。
日本の銭湯から得たヒントで古代ローマをあっと言わせる『テルマエ・ロマエ』風味も混じっていて、正直あざとい。

それをのどごしさわやかに読ませる料理人のワザ。和洋中がゴタ混ぜなのに、ケンカせずに並んでる居酒屋のお品書きみたいだ。
料理の細かなうんちく話はない。枝豆やチキン南蛮や湯豆腐も、調理や素材の説明もナシ。
そもそもファンタジー住人に京都の水が……とか言っても通じないだろう。

それでいい。
彼らは海鮮丼やおでんという「概念」と出会い、宇宙から降ってきたような未知にシビレてるのだから。隠し味がどうとか産地がどうとか、こまけぇこたぁいいんだよ。

そうそう、枝豆は皮をむく楽しさも味のうちなんだよなあ。うまいナポリタンは真っ赤になった口のまわりをふき忘れて店を出ちゃうんだ……。
どれも僕らが忙しい日々のなかで忘れていった感動だ。「のぶ」の客たちは、ありふれた料理と“出会い直して”くれるのだ。

1巻は出される料理に厳格な徴税請負人からわがままな子爵家の令嬢まで次々とノックアウトされる、さながら居酒屋無双。
ちょっとワンパターンの気もするが、いよいよキャラクターも出そろった。

ちなみに、蝉川夏哉先生の原作書きおろし&公式イラスト担当のくるり先生が作画を担当している別バージョンのコミカライズが「このマンガがすごい!WEB」で連載中!

2巻以降は店内での人間模様や外の世界との交流をどう「料理」してくるか楽しみだ。



<文・多根清史>
『オトナアニメ』(洋泉社)スーパーバイザー/フリーライター。著書に『ガンダムがわかれば世界がわかる』(宝島社)『教養としてのゲーム史』(筑摩書房)、共著に『超クソゲー3』『超ファミコン』(ともに太田出版)など。

単行本情報

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