365日、毎日が何かの「記念日」。そんな「きょう」に関係するマンガを紹介するのが「きょうのマンガ」です。
11月5日はリチャード・ニクソン(米・政治家)がアメリカ大統領になった日。本日読むべきマンガは……。
『WATCHMEN ウォッチメン』
アラン・ムーア(作) デイブ・ギボンズ(画) 石川裕人、秋友克也、沖 恭一郎、海法紀光(訳) 小学館集英社プロダクション ¥3,400+税
1968年11月5日は、リチャード・ニクソンがアメリカの大統領選挙で初当選した日である。
ニクソンは1972年の大統領選挙で再選を果たすが、その2年後にウォーターゲート事件で辞職する。
これによりニクソンは「任期中に辞任した唯一のアメリカ大統領」という不名誉な称号を得ることになる。
ニクソンが登場する作品といえば、『ウォッチメン』(原作:アラン・ムーア、作画:デイブ・ギボンズ)だ。
「コミックのアカデミー賞」ことアイズナー賞を受賞し、世界SF大会(ワールドコン)で発表されるヒューゴー賞の特別部門をマンガ作品で唯一受賞したアメコミの金字塔である。
作中、ニクソンはDr.マンハッタンをベトナム戦争に投入。アメリカはベトナム戦争に勝利し、ニクソンはウォーターゲート事件を隠蔽。さらに合衆国憲法を修正し、任期を無期限(現実では最長で2期=8年)とした。
そして作中における現在時間(=1985年)、ニクソン政権は5期目に突入し、アフガン侵攻を進めるソ連との対立が深刻化している。まさしく「核戦争直前の状況」だ。
このような状況下で、非合法的にヒーロー活動を続けるクライムバスター・ロールシャッハがとある殺人事件の捜査を始めるところから物語が始まる。
新聞やテレビなどの報道は、起きた出来事を記録する。しかし、その当時に生きた人々の記憶までは記録できない。
人々の記憶は、ただフィクションによってのみ、再現される。この『ウォッチメン』には、冷戦時代の緊張感や核戦争に対する恐怖、世界的な閉塞感が見事に再現されている。
冷戦下のメンタルが、ここにあるのだ。
<文・加山竜司>
『このマンガがすごい!』本誌や当サイトでの漫画家インタビュー(オトコ編)を担当しています。
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