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『ホークアイ:リトル・ヒッツ』 マット・フラクション(作) ディビッド・アジャ、フランチェスコ・フランカビラ、ステゥーブ・リーバー、ジェシー・ハム(画) 中沢俊介(訳) 【日刊マンガガイド】

2015/10/03


日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!

今回紹介するのは『ホークアイ:リトル・ヒッツ』


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『ホークアイ:リトル・ヒッツ』
マット・フラクション(作) ディビッド・アジャ、フランチェスコ・フランカビラ、
ステゥーブ・リーバー、ジェシー・ハム(画) 中沢俊介(訳)
小学館集英社プロダクション ¥2,000+税
(2015年8月26日発売)


マーベル・コミックスのキャラクター、ホークアイ。
映画『アベンジャーズ』『アベンジャーズ:/エイジ・オブ・ウルトロン』では、名優ジェレミー・レナーが演じ、劇中の活躍ぶりから、日本でもアベンジャーズのメンバーとして高い知名度を獲得した。

そして、『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』を観た人はおわかりと思うが、ホークアイはアベンジャーズのメンバーのなかでは、弓を使うことに長けてはいるが、それ以外の部分は「普通の人間」であることが、もっとも強調されて描かれているキャラクターとなっている。

そんなホークアイ=クリント・バートンを主人公とした、単独のアメコミタイトルがそのままズバリ『ホークアイ』である。
コミックスにおいても、ときにアベンジャーズのメンバーとして、ときにほかのスーパーパワーを持つヒーローと協力して活躍しているホークアイだが、この単独シリーズは、「ヒーロー」としてではなく、「人間」としてのホークアイの活躍……むしろ生活と言っていい部分にスポットを当てた内容となっている。

そうしたテーマの置き方が高く評価され、第1話から5話までをまとめた第1弾『ホークアイ:マイライフ・アズ・ア・ウェポン』は、アメリカの優秀なコミックスに贈られる「アイズナー賞」を受賞。
そして、本作『ホークアイ:リトル・ヒッツ』はその続きを描いたコミックスの第2弾となっているのだ。

第1弾で描かれていた“スーパー”ではないヒーローの災難の日々を、自身が死んでいるうちに2代目ホークアイを襲名した女戦士ケイト・ビショップとともに乗り越えるという基本ラインは踏襲しつつ、第2弾では彼はさらなる災難に巻き込まれていく。
その災難とは“女”。元夫を撃ち、ロシア人地上げ屋の経営する店にある手提げ金庫を手に入れようとしている、あきらかに怪しい“女”と関わることで、“スーパー”ではないヒーロー、ホークアイはまたまた苦難の続く戦いに身を投じることになる。
ある意味“女難”とも言えるこの状況を、彼の元恋人であるブラック・ウィドウ、元妻のモッキン・バード、そして現在の恋人であるスバイダーウーマンに目撃され、さらなる“女難”がアップする展開は、ホークアイという“普通”のキャラクターだからこそ映える物語と言えるだろう。

事件に対して、ホークアイ本人はいたって真摯に、でもちょっと不まじめに対応するがゆえに、まるでコメディ映画の主人公のように空回りし、不遇な状況に追いこまれていく。
そして、それでも自分のペースを崩さずに状況に対応するホークアイは、彼がスーパーヒーローに劣等感を覚えつつも、そうした状況に腐らずに生きている“普通の男”として描かれているのだ。
そんな人間くさいホークアイは、スーパーパワーで事件を解決するスーパーなヒーロー以上に親近感を持つし、感情移入せずにはいられないキャラクターとして描かれていることが、本作の最大の魅力と言えるだろう。

彼が遭遇する“女難”の事件の解決は次弾へと引き継がれるが、事件に巻きこまれるホークアイの人間味あふれる魅力に触れられることで、日々壁にぶつかっているような男性諸氏は元気をもらえるはずなので、ぜひ手にしてもらいたい1冊だ。



<文・石井誠>
1971年生まれ。アニメ誌、ホビー誌、アメコミ関連本で活動するフリーライター。アメコミファン歴20年。
洋泉社『アメコミ映画完全ガイド』シリーズ、ユリイカ『マーベル特集』などで執筆。翻訳アメコミを出版するヴィレッジブックスのアメリカンコミックス情報サイトにて、翻訳アメコミやアメコミ映画のレビューコラムを2年以上にわたって執筆中。

単行本情報

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