日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー! 今回紹介するのは『A+X:アベンジャーズ+X-MEN=最強』。
A+X:アベンジャーズ+X-MEN=最強
ダン・スロット ほか(作)ロン・ガーニー ほか(画)中沢俊介(訳)
小学館集英社プロダクション ¥2,000+税
(2015年7月29日発売)
『ダークナイト』や『アベンジャーズ』といった実写化作品のヒットもあり、邦訳アメコミの刊行ペースも著しく上がっている。そのラインナップも、ファンの間で語り継がれるマスターピースから数年前に本国で発表されたばかりの話題作まで様々だ。
『A+X:アベンジャーズ+X-MEN=最強』は後者にあたり、2012年から2014年にかけて展開されたシリーズの序盤を邦訳したもの。続刊の発売は未定だが、いわゆるアンソロジーなので、あまり前後の流れは気にすることなく楽しむことができるだろう。
とはいえ、まったくの予備知識もないままに読んでしまうのももったいない。どちらも半世紀に渡る歴史を有する偉大なスーパーヒーローチームなのだ。
まずはアベンジャーズ。
映画をご覧になられた方は、アイアンマン、キャプテン・アメリカ、ソー、ハルク、ブラック・ウィドウ、ホークアイの6人を思い浮かべるかもしれないが、コミックではもっと大勢のスーパーヒーローたちが在籍している。
当時は、本隊である「アベンジャーズ」(キャプテン・アメリカ、アイアンマン、ソーなど)に加えて、「ニューアベンジャーズ」(スパイダーマン、ザ・シング、デアデビルなど)、「シークレット・アベンジャーズ」(ウォーマシン、ジャイアントマン、エージェント13など)、「アベンジャーズ・ユニティ・スクワッド」(ウルヴァリン、ローグ、スカーレット・ウィッチなど)といった複数のチームが稼働していた。
スーパーヒーローを二分するシビル・ウォーにおいて、一時はバラバラになってしまった彼らだが、宇宙列強種族スクラル(映画『アベンジャーズ』におけるチタウリ)の侵略や、初代グリーン・ゴブリンことノーマン・オズボーンの暗躍を経て、ひとまずの安定状態に入っていた。
そして、X‐MEN。
悪の脅威から人類を守り、人類とミュータントの平和的共存を実現するために組織されたミュータントヒーローチームである。
こちらも「エクスティンクション・チーム」や「セキュリティ・リーコン」、「ニューミュータンツ」などのグループに分かれているのだが、かえって複雑になるので割愛。
ミュータントとは、遺伝子の突然変異によって人智を超えた特殊能力や外見を得てしまった超人類のことだ。
人類にとって彼らの存在は脅威であり、常に迫害の対象だったものの、とある事件がきっかけでその数を大きく減らしており、これまで懸念されていた人類とミュータントによる種の存亡をかけた全面戦争には至っていない。
本作にさきがけて、『AVX:アベンジャーズ VS X-MEN』で激突を果たしたアベンジャーズとX-MEN。しかし、それも理由あってのこと。最終的には手を取り合い、「フェニックス・フォース」と呼ばれる宇宙規模の力を手に入れたことで暴走するサイクロップスらを止めるために戦った。
人類のミュータントに対する差別がなくなったわけではないが、この戦いを機に結成された「アベンジャーズ・ユニティ・スクワッド」は、先に挙げたメンバーからもわかるように、ミュータントヒーローを中核に据えた新たなアベンジャーズだ。
このように様々な試練を乗り越えて、ようやく訪れたヒーローがヒーローらしく活躍できる時代――そのさなかに発表されたシリーズが、この『A+X』なのだ。
キャプテン・アメリカ&ケーブル! ハルク&ウルヴァリン! ガンビット&ホークアイ! スパイダーマン&ビースト! そしてロキ&ミスター・シニスター!?
ただただ胸のすくスーパーヒーロー(と、スーパーヴィラン)たちのゴージャス極まりない夢の共闘を楽しんでほしい。
<文・ガイガン山崎>
暴力系エンタメ専門ライター。「マーヴルクロス」とともに成長していくつもりだったので、その休刊と同時に発育も止まりました。従って、私のことは中学生として扱ってください。