日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは『スーパークルックス』
『スーパークルックス』
マーク・ミラー(作) レイニル・ユー(画) 中沢俊介(訳)
小学館集英社プロダクション ¥2,000+税
(2015年8月26日発売)
ヴィラン(悪役)といえば、アメコミの重要な魅力のひとつだ。
ストーリーを進行させ、ヒーローの活躍の場所を作る重要な役割がヴィランには求められている。
ヒーローには担わせることのできない物語を表現できるという部分も、見逃すわけにはいかない。倫理を気にする必要はないし、痛めつけられて負けるのも仕事のうちだからだ。
そうした理由から、アメコミではヴィランを主人公におく物語も珍しくはない。
今回紹介する『スーパークルックス』はDCコミックスでもマーベルコミックスでもないが、超人たちのあふれている世界の話になる。
主人公ジョニーは、結婚式当日だというのに、わざわざ費用の足しにするため犯罪を犯した結果、ヒーローにボコボコにされて牢屋に放りこまれ、婚約者にも愛想をつかされたという、どうも憎めないところのある男だ。
彼はひょんなことから、むかし世話になった友人が借金を抱えていることを知り、仲間を集めて超A級ヴィランから大金を分捕ろうとする。要塞のような屋敷に乗りこむため、スペインへと飛ぶヴィランたちはいったいどのような計画を抱えているのか。
ヒーローコミックの文法で、『オーシャンズ11』に代表されるヘイスト(強奪)ものを描いたと評される本作は、マーブルコミックスで活躍し、『キック・アス』でオリジナル作品の道を開いたマーク・ミラーが原作のコミックだ。 ヴィランたちを主人公にすることで描き出されているのは、悪人たちの方が義理人情に厚く、善人であるはずのヒーローたちの方がむしろ情け容赦なく、独善的なクソ野郎たちであるという、逆転の構図であることが興味深い。
ミラー独特の嫌味も利いている。
たとえば、X-MENのウルヴァリンが持っているような再生能力、それをどう盗みに使うのか? という、ヒーローコミックのお約束にひねりを加えたギミックや、不殺傷をうたいながら地を割るパンチを繰り出す「正義の」ヒーローといった、マンガ表現の食い違いのおかしさへの指摘だ。
絵を担当するレニール・ユーのアートは人体の描きかた、そしてその破壊の仕方に非常に意識をはらっており、描いてる情報量が多いのに何が起きてるかわからないということがない。
またその筆致でスペインの観光地という華やかな舞台を鮮やかに描き出している。
痛快なストーリーと華麗なアートがあいまって、全体のトーンは非常に明るいものになっており、気軽に手にとっていただきたい作品といえる。
<文・Captain Y>
アメコミオタク。クリエイター・オリジナル作品専門の邦訳アメコミ出版社Sparklight Comicsから翻訳を担当した『ファタール』、『ベルベット』、『デッドリー・クラス』が発売中。
ブログ:Codex 40000 建設予定現場
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