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【日刊マンガガイド】『イノサン』第5巻 坂本眞一

2014/07/14


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『イノサン』第5巻
坂本眞一 集英社 \514+税
(2014年6月19日発売)


1793年、国王ルイ16世の首を刎ねたパリの処刑執行人サンソン家の四代目当主、シャルル-アンリ・サンソン。その数奇な運命を描いた『イノサン』が、ついに新章「真紅のベルサイユ編」に突入!

1巻では、敬虔なカトリック教徒として育ちながらも、己の手を血に染めねばならない我が身を嘆く繊細なシャルルが描かれた。しかし、2巻以降のシャルルは強く、美しく、理性的に成長していく。
その根底にあるのは、処刑人一族の血を絶やさんとする実の父への反発と、“非の打ちどころのない処刑人になって、呪われた家系を絶やす”という強い決意。
つづく3、4巻では、馬にロープを引かせて四肢を引き裂く未曾有の大処刑が描かれた。

最新5巻で描かれるのは、シャルルと処刑人の申し子とでも呼ぶべき妹のマリーが、デュ・バリー夫人(ルイ15世の公妾)と距離を縮める様。そう、いよいよ2人は本格的にベルサイユ宮殿と交わってゆくのだ――。

マリー・アントワネットやモーツァルトなど、歴史上の大スターも次々に登場。
あの名作『ベルサイユのばら』のアンドレと同じ名の青年までストーリーに絡み始め(登場自体は3巻から)、今後の物語にどう影響を与えるのかワクワク。
もちろん、キャラクターの哀しみや喜びを、大胆な比喩とはかなくも流麗な筆致で描き出した圧倒的画面構成は、今まで以上にすごみを増している。
見どころの多い最新刊だが、個人的にヒットしたのは名実ともにサンソン家の当主となったシャルルが、父の心の奥底を知るシーン。落涙必至の名シーンだ!

望まない家系に生まれながらも、その生をまっとうしようと決意し、歴史的大役を担うことになるシャルル。
大局にあって無垢な心を失わないシャルルをみていると、気高さって磨かれてゆくものなんだなあと感じる。



<文・山脇麻生>
ライター&編集者。「朝日新聞」「SPA!」などにコミック評を寄稿。
Twitter:@yamamao

単行本情報

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