東京の人気の下町エリア・谷根千にたたずむ“町の小さな本屋さん”往来堂書店。
レーベルや著者ではなく、内容につながりがある書籍を並べる“文脈棚”で有名な往来堂書店では、マンガの棚もユニークな品揃えをしている。
「読者にとっては、発売日よりもその本を知った瞬間が、大切」と語るのは往来堂書店・コミック担当の三木雄太さん。常に新鮮な本との出会いを提案しつづける往来堂書店で今、動いている注目の3作品は!?
往来堂書店 オススメの3冊
『片隅乙女ワンスモア』第1巻 伊藤正臣
¥630+税 幻冬舎
(2014年6月24日発売)
海に沈みゆく街を救うため、少女が一夏を繰り返すタイムリープもの。『僕だけがいない街』など近年、話題作の多いタイムリープものですが、本作では、繰り返される時間から抜け出すための条件が、好きな男の子から告白「される」という受け身なところが、これまでの作品にない新しさのように感じます。
そして何より作中で繰り返される「夏」の描写が本当に秀逸! キツい日差しが作る日向と日陰のコントラストや、夏祭りの夜の騒がしさ、湿った風が吹き抜けていく様子などなど、どのページをめくっても一気に気持ちが夏に引き寄せられます。
装丁も夏らしい色みで目を引きますし、『それでも町は廻っている』の石黒正数先生によるオビの推薦コメントもあって、当店では男女問わず多くのお客様に手にとっていただいています。
これから夏本番に向けて大々的に展開していきたいです!
『アンネッタの散歩道』第1巻 清瀬赤目
¥819+税 芳文社
(2014年6月27日発売)
小さな妖精たちが、文通相手の人間の女の子に会うための旅に出るファンタジー4コマです。かわいい妖精たちの日常というと、これでもかと綿密に描き込まれた森の風景が印象的だった『ハクメイとミコチ』を思い出しますが、本作も4コマという画面の制約があるなかで、背景や時代設定まで含めてきっちりファンタジーを描いている意欲作。『魔法使いの嫁』などのファンタジー作品が好きな方が手にとってもおもしろいかもしれません。
今年、当店では「まんがタイムきらら」(芳文社)系列の作品を、既存の読者以外に手に取ってもらえるよう展開したいと考えており、すべての棚を4コマのような大判の本が収納できる高さに揃え、『アンネッタの散歩道』も『よつばと』などのかわいらしいキャラクターの作品と並べることで、当店をよく利用する女性のお客様にもお買い上げいただいています。
『ラチェット・シティ』下巻 山下ユタカ
¥680+税 KADOKAWA/エンターブレイン
(2014年3月24日発売)
伝説のバイクをめぐって巻き起こるアクション群像劇。
キーアイテムを中心に、時には時系列を入れ替えながら展開されるドラマは、クエンティン・タランティーノ監督の名作映画『パルプ・フィクション』を彷彿とさせます。
“覚せい剤(冷たいの)”“執行猶予中(ベントー持ち)”など不良たちの符丁であふれかえっているのに、ヤンキーマンガのような泥臭さを微塵も感じません。かっこいいと思うものを、ひたすらかっこよく描こう。そんな作者の想いが伝わってくるような作品です。
あちこちで起こっていたトラブルが一点に収束していく様は見事しかいいようがなく、上下巻とコンパクトにまとまっているものの、読後の満足感は非常に高いです。
書店員が作るミニコミ誌「まんきき」
コミック担当書店員によるマンガ情報ミニコミ誌「まんきき(漫画家さんにききました)」。2011年からスタートし、書店員ならではの視点から、漫画家さんへのインタビューを行っている。
往来堂書店の三木さんは「まんきき」メンバーのひとりとして、「まんきき」で取り上げる作品の提案や編集作業を行っている。頒布時に「まんきき」を置く書店一覧など、詳細情報は下記URLをチェック!
まんきき公式サイト:
http://mankiki.comitans.info/
まんききTwitter:@man_kiki
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