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『ネルソン・マンデラ 悲劇を希望に変えた男』 森田信吾 【日刊マンガガイド】

2016/06/13


日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!

今回紹介するのは、『ネルソン・マンデラ 悲劇を希望に変えた男』


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『ネルソン・マンデラ 悲劇を希望に変えた男』
森田信吾 潮出版社 ¥833+税
(2016年5月20日発売)


黒人解放運動に人生を捧げた男、ネルソン・マンデラの激動の生涯についてあなたはどれくらい知っているだろうか。
アパルトヘイト政策のもと、ただ黒人であるというだけで虐げられ続けた人々の先頭に立ち、自由を勝ち得た英雄——その苦闘の歴史は長く、想像を絶するほどの困難に満ちていた。

著者は『栄光なき天才たち』シリーズで知られる森田信吾。
偉業をなしとげながらも歴史の波間に隠れ、忘れられがちな偉人たちの選出もさることながら、人間的な横顔を活写する手腕に優れた描き手である。

ネルソン・マンデラとて、もとから“白人優勢の社会”を覆そうという大それた野望を抱いていたわけではない。
しかし、地元の居留地を出て、白人たちが席巻する南アフリカ連邦首都に暮らすようになって初めて差別のすさまじさを知るのである。

これは決して大昔の話ではない。
アパルトヘイト政策がさらに加速していくのは第二次世界大戦後のことである。

「私は決して“政治的”な人間ではないと思って生きてきた」というネルソン・マンデラが、何度となく反逆罪による虐殺の危機をくぐり抜け、また27年に渡る投獄生活を乗りこえて、自由を叫び続けたか。その出発点はネルソン・マンデラの“いち市民”としての心にある。

日々、「これはおかしいのではないか」と疑問が浮かんでも、「しかたない」と諦めてしまうばかりでは恥ずかしい。
「自分にはどうしようもない」と思うばかりでは、世の中は変わらない。
また、なんら「悪いことはしていない」つもりでも、無知や誤った認識が間接的に差別にかかわっているかもしれないこと……様々な想いをかき立てる、人物伝を超えた作品である。



<文・粟生こずえ>
雑食系編集者&ライター。高円寺「円盤」にて読書推進トークイベント「四度の飯と本が好き」不定期開催中。
ブログ「ド少女文庫」

単行本情報

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