365日、毎日が何かの「記念日」。そんな「きょう」に関係するマンガを紹介するのが「きょうのマンガ」です。
7月12日は中大兄皇子が皇太子となった日。本日読むべきマンガは……。
『天智と天武 -新説・日本書紀-』 第1巻
園村昌弘(案・監) 中村真理子(画) 小学館 ¥552+税
きょうから千年以上も前の645年の7月10日は、「大化の改新」の始まり、中大兄皇子と中臣鎌足が蘇我入鹿を暗殺した、「乙巳の変」が起こった日である。筆者は6(ム)4(シ)5(コ)ろす、といういささか物騒な憶え方を習ったが、みなさんはどうだろう。
きょう紹介するのは、そんな「乙巳の変」から始まる長編マンガ。
というのも、7月12日は中大兄皇子が皇太子となった日なのである。
のちに天智天皇になる中大兄皇子だが、その息子である大友皇子は、天智天皇の弟である大海人皇子が起こした壬申の乱に破れ、天皇の位は大海人皇子……天武天皇のものとなる。
この天武天皇が、じつは皇極天皇と蘇我入鹿の間に生まれた子どもだった……という隠された「真実」を描くのが『天智と天武』だ。
ある時、異父兄弟であり、父の仇でもある中大兄皇子の前に姿を現す大海人皇子。
だが、彼は父の無念を果たそうとするどころか、仇のはずの中大兄皇子に笑顔を向け、なんとその付き人になる……などと言い出す。
消せない野心をみなぎらせながら覇道を突き進む中大兄皇子と、とらえどころのないからめ手で彼を翻弄する大海人皇子、一進一退を繰り返す2人の間には、激しい憎悪とともに、愛情としか呼べないものが生まれていく。
古代日本の最大の内乱となった壬申の乱を描く歴史ロマンであるとともに、あまりに深い業で塗り固められた愛の物語である。
本編では、いよいよ最大のクライマックスであろう、壬申の乱が始まろうとしている。きょうこの日こそ、本作を一気読みするには絶好の日だ。
<文・前島賢>
82年生、SF、ライトノベルを中心に活動するライター。朝日新聞にて書評欄「エンタメ for around 20」を担当中。
Twitter:@maezimas