日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『特別のEGOIST』
『特別のEGOIST』 第1巻
楠みちはる 小学館 ¥552+税
(2016年6月30日発売)
『湾岸ミッドナイト』『シャコタン☆ブギ』など、自動車やバイクをテーマに独自の人生哲学を説いた作品群で知られる、楠みちはるの最新連載。
大学生の頃に作家デビューしたものの、その一作のみでフリーライターに転身した神木トオルは、22歳の誕生日に偶然出会った占い師の婆さんから「名刺を100枚作り、1枚を手元に残し99枚を配れ」と告げられる。
そして時は過ぎ、45歳の誕生日。彼の前に再び占い師が現れ、「お前は欲望の取次人なんだ」と告げられる――。
元カノのレイコ、圧倒的な霊能力をもつ女子高生のマリ、かつて神木がゴーストライターを務めた小説家の北村仁……といった人々の「人間の欲望と浄化」をめぐる交錯。
「東京という街が欲望の集う土地だからです」
「世の中は嫉妬の上に成り立っている」
「結局オレはこの体の奴隷だったんだ」
といった物語の伏線となるセリフも意味深で、まだ序章段階ながら思わず引きこまれる魅力がある。
もちろん、著者ならではのマニアックな車ネタや
「スピードってほら麻薬だからサ」
「人もまずスペックを見るわ」
といった、車と人生にまつわる名言も多々。
従来の楠ファンも満足できる異色作だ。
<文・井口啓子>
ライター。月刊「ミーツリージョナル」(京阪神エルマガジン社)にて「おんな漫遊記」連載中。「音楽マンガガイドブック」(DU BOOKS)寄稿、リトルマガジン「上村一夫 愛の世界」編集発行。
Twitter:@superpop69