日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『妄想食品館』
『妄想食品館』
ドングリ ぶんか社 ¥926+税
(2016年10月14日発売)
「pixiv」で累計700万PV超の人気作家の商業デビューコミックス。
食とエロをかけた作風自体は、かの文豪・谷崎潤一郎を筆頭に、決してめずらしくはなく、むしろエロの常套句的表現としてすでに使い古された感すらあるが、こちらはメタファーもクソもない、擬人化すらされていない食べ物が陵辱のかぎりを尽くされるという、トンデモ作品である。
ちくわがキュウリやチーズを前に「なんて立派な…」と顔を赤らめつつ「死んじゃう、裂けちゃう」ともだえたり、ドーナツが生クリームを注入されて「ダメ、これ以上は…漏れちゃう…」とあえいだり。
誰もが一度は妄想したことはあっても、誰もマンガに描かなかった、バカバカしくもシュールな世界が(ムダに)フルカラーで展開されてゆく。
しかし、こーゆーものは自主制作の世界でニヤニヤ楽しんでいるのがベストであって、商業作品としては、冒頭のちくわ×キュウリをピークに、どんどんムリヤリ感が増してパワーダウンしてゆくのが残念。
やっぱりシンプル・イズ・ベストというか、ちくわは鉄板だな~と妙に感心したり、同じゲスでも田中圭一先生のすごみをしみじみ感じたり。
とりあえず、食べ物で遊んじゃいけません! と笑顔でツッコんで読むべし。
<文・井口啓子>
ライター。月刊「ミーツリージョナル」(京阪神エルマガジン社)にて「おんな漫遊記」連載中。「音楽マンガガイドブック」(DU BOOKS)寄稿、リトルマガジン「上村一夫 愛の世界」編集発行。
Twitter:@superpop69