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【きょうのマンガ】8月12日はIOCが南アフリカ共和国をオリンピックから追放した日! おすすめするのは『MASTERキートン』!

2014/08/12


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『MASTERキートン 完全版』第4巻
浦沢直樹(著)勝鹿北星/長崎尚志(脚) 小学館 ¥1,238+税


1964年10月10日、第18回夏季オリンピックが日本・東京で開催された。極東の有色人種国家で初めて開催された、この記念すべきスポーツの祭典に、南アフリカ共和国選手団の姿はなかった。
さかのぼること2ヵ月前の8月12日、国際オリンピック委員会(IOC)は、同国が採る人種隔離政策、いわゆる「アパルトヘイト」を非難し、くだんの措置に至ったものだ。

黒人だけにかぎらず、「有色人種すべてになんらかの行政的制限を設ける」という、アパルトヘイトの本質を理解する者は多くない。南アフリカだけでなく、多くの国で今も差別意識が蔓延しているのが現実だ。
浦沢直樹の代表作として知られる『MASTERキートン』の主人公、平賀=キートン・太一が暮らすイギリスもまた、例外ではない。

『MASTERキートン』の完全版第4巻に収録されている「キートン先生の事情」には、南アフリカ出身の気のいいタクシードライバー、Mr.スターンが登場する。
ロイズ保険組合のオプ(調査員)をしながら、イギリスで就活中の主人公、平賀=キートン・太一は、黒人青年がたまたま起こした交通事故を目撃したことが縁で、現場から逃走した青年をスターンとともに追跡するはめに。

キートンは道中、スターンがかつて黒人解放組織「アフリカ民族会議(ANC)」を支援する「統一民主戦線(UDF)」に所属しており、現地で凄絶かつ哀しい経験をしていたと知る。
そして、スターンがキートンと出会った日を「特別な日」と呼ぶ理由とは……?

キートンによるいつものスーパーマン的な活躍は、英国特殊空挺部隊(SAS)のテクニックが発揮される追跡シーンぐらいで、やや地味な印象すらある本エピソード。だが、スターンが語る「特別な日」の“意外な真相”に、ホロリとさせられる名編である。
アパルトヘイトが国際社会で改めて大きな課題であると認識された、本日10月10日に読み返せば、以前とは違った感想も出てくるかもしれない。



<文・富士見大>
編集プロダクション・コンテンツボックスの座付きライター。『衝撃ゴウライガン!!兆全集』(廣済堂出版)、『THE NEXT GENERATION パトレイバー』劇場用パンフレット、平成25年度「日本特撮に関する調査報告」ほかに参加する。

単行本情報

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