『目玉焼きの黄身 いつつぶす?』第3巻
おおひなたごう KADOKAWA/エンターブレイン \620+税
(2014年7月25日発売)
会話の席で“食べ物"の話以上に盛り上がるのが、“食べ方”の話。熱くまじめに、独自のこだわりを真摯に語れば語るほど、奇異にも滑稽にも思えてくるのも、“食べ方”の話の常。
本作は、それこそ「目玉焼きの黄身いつつぶす?」といった、人それぞれの“食べ方”についてのこだわりを、真摯かつ奇異にも滑稽にも描く作品だ。
主人公は、実直だけにキレやすい「ジロ」こと田宮丸二郎。みふゆという彼女がいて、気は合うのだけれど、なぜか“食べ方”の好みだけは合わない。
みふゆは目玉焼きの黄身はつぶさずに、きれいに残しておいて、最後にひと口でいくタイプで、ジロはその逆……というエピソードが第1巻で描かれた。みふゆに合わせるようと考え、そのやり方にも慣れてきていたジロだったが、目玉焼きをパンと一緒に食べるときには黄身を早々につぶし、それをパンにつけて食べるというみふゆのこだわりが発覚し、ジロの怒りが爆発して……というのが最新3巻。
なんとも小さい話だけれど、家族や友人はもちろん、恋人間にとっては、かなり大きい話。
さらにパンケーキの食べ方でもすれ違いがあったことで、ジロはみふゆとの別れを決意。その間、ジロは小学校時代の初恋の人で、バツイチの「委員長」、みふゆは構成作家の「宮さん」と急接近して……と、なんと怒涛の恋愛展開に!
このシリアスな恋愛モードと、「気にしているのはパンケーキの切り方」というギャップがおかしいのだが、たかが“食べ方”、されど“食べ方”。世間の恋人や夫婦のすれ違いの元凶も、こんなことだったりして!?
食テーマのギャグマンガと取るか、なぜか笑える食マンガと取るか。それも"食べ方"同様、読者それぞれかもしれない。
<文・渡辺水央>
マンガ・映画・アニメライター。編集を務める映画誌「ぴあMovie Special 2014 Summer」が発売中。DVD&Blu-ray『一週間フレンズ。』ブックレットも手掛けています。