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『ドミトリーともきんす』(高野文子)ロングレビュー! 自然科学にマンガが寄り添って、おだやかな世界をかたちづくる。

2014/11/05


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『ドミトリーともきんす』
高野文子 中央公論新社 \1,200+税
(2014年9月24日発売)


あの高野文子の12年ぶりの新作ということで、格別の思いで手にした人も、きっと多いはず。

学生寮「ともきんす」を舞台に、そこに下宿する4人の学生と寮母のとも子&幼娘のきん子の日常のさまざまな事象をめぐる会話で綴られた、全13章。
朝永振一郎、牧野富太郎、中谷宇吉郎、湯川秀樹という、実在の科学者をモデルにした架空の物語であり、彼らの著書の読書案内でもあるという、ファンタジーと実用性がさらりと同居したスタイルもさることながら、まず驚愕すべきは、これまでとはガラリと趣きを異とする絵のタッチ!

コマを追うごとに図式化されてゆく画面。このコマだけ見れば、もはや高野文子のマンガとは思えない!

コマを追うごとに図式化されてゆく画面。このコマだけ見れば、もはや高野文子のマンガとは思えない!

これは高野自身が自然科学の本に感じた「涼しい風」を伝えるべく、製図ペンを用いた均一なタッチの絵を、なるべく感情を込めずに描くように習練(って!)した結果だというが、高野文子のような人が、この後におよんで……と、その飽くことなき探究心にうれしくなると同時に、そら恐ろしくもなったり。
そんな高野の手にかかれば、お偉い科学者もあくまで学生の「マキノ君」「ユカワ君」になるわけで。おのおの、すでに未来の発見へと繋がる「ふしぎの芽」を宿しつつ、すこぶるチャーミング。

単行本情報

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