ある日、地球に住む人類は、繁殖する能力を完全に失った。
根本的解決策はないか、と苦悩する科学者・安代孝志郎の元にやってきたのは、地球で唯一繁殖機能を持つ突然変異の少女、被験体μ(みゅう)。
謎多き少女・みゅうを巡って、多くの人々の政治的抗争が始まる。
SFストーリーを軸に、アクション、お色気と盛りだくさんな内容だ。主人公・孝志郎が完全な理論派で、共にみゅうを守ることになった忍戸伽夜(おしとかや)がドSの肉体派という組み合わせも面白い。
女の子がかわいい、という入口でもよし。アクションがド派手、という入口でもよし。読む人を引きつけるエンタテイメント要素は、ひととおり揃っている。
テーマのひとつになっているのが「家族の愛情」だ。この世界の人類は繁殖能力を失って久しく、子どもが存在しない。大人たちは、子ども型のアンドロイドを購入して、擬似家族生活を当たり前のように営んでいる。
大人だけで生きていけると割り切れない。子どもを愛し、家族を作るのが人類の自然な姿なのだ、とこの作品は根本の部分で物語っている。
1巻では、そうしたテーマとエンタテイメントが全部盛りになっており、とにかく濃度が高い。
一見派手な作品だが、その一方で今後、家族愛という普遍的なテーマが孝志郎やみゅうを中心に、どのように表現されていくか興味深い作品だ。
<文・たまごまご>
ライター。女の子が殴りあったり愛しあったり殺しあったりくつろいだりするマンガを集め続けています。
「たまごまごごはん」