日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『偏愛カフェ』
『偏愛カフェ』 第1巻
有咲めいか 新潮社 ¥580+税
(2017年1月17日発売)
特定のモノや人などを偏って愛すること=「偏愛」。
濃度の高低はありこそすれ、だれしもひとつくらいは偏愛の対象があるだろう。
しかしこれが性的嗜好となると、少々やっかいな諸兄も現れる。
『偏愛カフェ』は、いわゆるパラフィリアン(性的倒錯者)たちが集うことでひそかに有名なカフェ「STATICE」が舞台。表向きはごく普通のカフェだが、ときおりパラフィリアンが訪れては、他人には理解しがたい性的嗜好をマスターの千日浩(せんにち・ひろ)に告白する。
ただし「STATICE」にやってくるパラフィリアンたちは、千日に悩み相談をしたいわけではなく、話を聞いてもらいたいだけ。友人・知人にはけっしてできない、めくるめく性的嗜好エピソードをぶちまけ、スッキリしたいだけなのだ。
表紙に描かれているメガネのパラフィリアンの嗜好は妊婦性愛(メイシオフィリア)。
愛する妻の妊娠で本当の自分を発見した男だ。
しかし、そのよろこびも妻が出産した時点で終わりとなる。
その手の風俗では欲求が満たされないことを知った男がとった行動とは――。
そのほか、生理血嗜好(メノフィリア)、加虐性愛(サディズム)、人形性愛(アガルマトフィリア)など、様々なパラフィリアンの生態が1話完結で描かれる。
内容に対して描写じたいは“グロ全開!”というほどではない。
しかしながら人によっては「どうしても受けつけない」というエピソードが含まれている危険性もある。「それでもパラフィリアンの世界をのぞいてみたい!」という欲求がおさえられないアナタには迷わずレコメンド。
いびつな愛の物語をぞんぶんにご堪能いただきたい。
<文・奈良崎コロスケ>
中野ブロードウェイの真横に在住。マンガ、映画、バクチの3本立てで糊口をしのぐライター。