『White Tiger ~白虎隊西部開拓譚~』第1巻
夏目義徳 集英社 \463+税
1868年の8月23日……「慶応」から「明治」に替わるちょうど2か月前。 戊辰戦争に敗れた会津藩の、白虎隊の隊員たちが集団自害したのはこの日のことだった。白虎隊は16~17歳の少年で編成された会津藩の最年少軍隊。幕末の動乱の中、故郷の地を守りたいという一心で志願するも、悲劇的な最期を遂げるのである。
『White Tiger ~白虎隊西部開拓譚~』は、白虎隊の生き残りがサンフランシスコに新天地を求める物語だ。「白虎隊がなぜ西部開拓?」と疑問に思うだろうが、このころ会津の志士たちがアメリカに「会津若松の町」を建設すべく渡ったのはれっきとした事実である。
彼らを率いたのは、かねてより会津藩と親交していた武器商人・シュネル。日本での居場所も生きる目的もなくした会津藩士たちは、新たな人生を求めてサンフランシスコに移住したわけで、たしかにこのなかに白虎隊のメンバーが混じっていたとしても不思議ではない!?
かくして羽織袴姿、刀をぶら下げたサムライたちがアメリカに上陸。見上げるような体躯の異国人、最新型の銃、爆走する蒸気機関車、幌馬車……見るものすべてが驚きの連続だ。日本人がアメリカで開いた最初の入植地として歴史に名を残す「若松コロニー」を舞台に、白虎隊の生き残りである鶴之助(つるのすけ)、英虎(ひでとら)が日々奮戦する!
サムライとしての人生をまっとうできなかった劣等感を抱える鶴之助。勇敢で優れた剣の腕を持つものの、農地開拓の場で自分が役立てるのか葛藤する英虎。中国人移民、アメリカ先住民らとあわや一触即発の場面など、さまざまな危機に直面しながらともに異国で生きる覚悟をかため、認めあう2人の友情と成長が胸を打つ。
ちなみに本作のヒロインで、シュネル家の子守として渡米した“おけい”という女性は実在の人物。いまも若松コロニーの跡地には、おけいの墓石が残っている。ゴールドラッシュに沸く19世紀末のカリフォルニアに乗りこんだ彼女たちの激動の青春を、想像力を豊かにふくらませていきいきと描いた作品だ。
<文・粟生こずえ>
雑食系編集者&ライター。高円寺「円盤」にて読書推進トークイベント「四度の飯と本が好き」不定期開催中。
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