日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『でぃす×こみ』
『でぃす×こみ』 第2巻
ゆうきまさみ 小学館 ¥630+税
(2017年1月30日発売)
女子高生の渡瀬かおるは、小学生の頃から投稿を続けてきた、筋金入りのマンガっ娘だ。
念願かなって新人賞で大賞獲得との連絡を受けて、意気揚々と授賞式に臨んだが、受賞作『でぃす×こみ』は、自分の作品ではないBL風の少女マンガであった(かおるが応募したのは少年マンガ)。
いったい、だれが自分の名前で応募したのか?
不安な気持ちで帰宅した、かおるは『でぃす×こみ』は、大学生の兄・弦太郎が投稿したものだと知る。弦太郎は、描きあげた原稿を見ているうちに、
「なんか『渡瀬弦太郎』って感じの漫画じゃないなーって気がして――」
妹の名前で出版社に送ってしまったのだった。
だれかに陥れられた、という心配は消えたものの、弦太郎が「初めて描いた」マンガで大賞を取ったことに、かおるはショックを受けるのであった。
兄妹揃って担当編集者の八反田と会い、真相を打ち明けようとするが、八反田から『でぃす×こみ』を男性が描いたとしたら、
「あたしが真っ先にドン引き!!」とリアクションされて、いいそびれてしまう。
そこで弦太郎が下書きをし、かおるがネームを切って、作画するという兄妹二人三脚の創作活動が始まるのであった。
第2巻では、アドバイス役の弦太郎が入院したり、八反田に受賞作の『でぃす×こみ』だけフキダシのなかの筆跡が違うと疑念を持たれたり、といったトラブルが発生するが、なんとか乗りきっていく(ただし、いつか真相がばれるのでは? という不安をはらんだ状態は変わらない)。
また、同期デビューの蘭丸しずかという個性的なライバルキャラクターも登場。
この2人の切磋琢磨も楽しみである。
ところで、『でぃす×こみ』では、各話の冒頭に、作中作として渡瀬かおるのBLマンガがカラーで登場する。デビュー作「でぃす×こみ」の従兄弟同士に始まり、王×家臣、クラス委員長×帰宅部員、師匠×弟子、先輩×後輩(会社員)、同期×同期(サッカー部員)、医師×患者、マスター×スレイブ、名探偵×怪盗……第2巻では、犬×主人(!)なんて組みあわせまで登場する。
これらはもちろん、ゆうきまさみが描いているわけだが、その器用さはさすがである。
ちなみに、各話冒頭のカラー原稿は、毎回ゲストの漫画家が着色をしている。
これまでのゲストは灰原薬、黒丸、室井大資、のりつけ雅春、オノ・ナツメ、東村アキコ、おかざき真理、雲田はるこ、種村有菜、眉月じゅん――という顔ぶれである
4頁のうち、作中作(BLマンガ)部分の3頁をゲストが着色しているのだが、色のつけ方には漫画家ごとに個性があるので「いつものゆうきの絵とどことなく違う」雰囲気を醸し出している。
4頁のうち最後の1頁はゆうきまさみが色を塗っているので、その違いを見比べてみるのも結構楽しいと思う。
なお、本作の発売に合わせて、ゆうきまさみのもうひとつのシリーズ『白暮のクロニクル』も最新巻の第10巻が発売された。
こちらは連続殺人鬼「羊殺し」の正体が明らかとなり、見逃せない展開を迎えている。
<文・廣澤吉泰>
ミステリマンガ研究家。
「ミステリマガジン」(早川書房)にミステリコミックの総括を執筆(隔号)。『本格ミステリベスト10』(原書房)にてミステリコミックの年間レビューを担当。