日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『アトム ザ・ビギニング』
『アトム ザ・ビギニング』 第4巻
手塚治虫(案) カサハラテツロー(画) ゆうきまさみ(コンセプトワークス)
手塚眞(監) 手塚プロダクション(協) 小学館クリエイティブ ¥560+税
(2016年12月5日発売)
2017年春より、NHK総合にてアニメ版が放映されることが決定している『アトム ザ・ビギニング』の第4巻が、このたび刊行された。
心優しき科学の子・アトムが誕生する以前の物語を、若かりし頃のお茶の水博士&天馬博士のコンビと、彼らの作ったロボット・A106を中心に描く本作。
本巻の冒頭で描かれるのは、A106とロシアの軍用ロボット「イワン」の対決である。
イワンといえば、本作の原典である『鉄腕アトム』の「イワンのばかのまき」に同名のロボットが登場する。原典でのイワンは、遭難生活の末に主人を失い、ひとりぼっちで月に暮らしているという設定で、心を持たないゆえに主人の死を理解できず、目の前に現れたアトムや人間を死んだ主人と思いこみ、不器用に奉仕し続けるさまが涙を誘う存在だった。
そんなイワンと同名のロボットがA106と対決するのだから、せつない結末を迎えないはずもなく……。手塚ファンのツボをついたネタの多い、本作ならではの対戦カードといえる。
また、本巻のもうひとつの目玉として、A106の後継機となるA107のパーツ・レイアウト決定までの流れも見逃せない。A106の後継機なら……そりゃあこう来るよな! と、予想できていてもグッと来てしまうこと間違いなしだ。
このあと完成するであろうA107がどのように物語をかき乱してくれるのか、読者の期待を高めて幕を下ろす第4巻。
アニメだけでなく、原作の今後の展開も、とうぶん目が離せなくなりそうだ。
<文・山田幸彦>
91年生、富野由悠季と映画と暴力的な洋ゲーをこよなく愛するライター。怪獣からガンダムまで、節操なく書かせていただいております。
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