365日、毎日が何かの「記念日」。そんな「きょう」に関係するマンガを紹介するのが「きょうのマンガ」です。

2月14日はバン・アレン帯のお誕生日じゃなくてバレンタインデー。本日読むべきマンガは……。

『ワイド版 究極超人あ～る』 第4巻
ゆうきまさみ 小学館 ￥630+税

2月14日といえば、ほとんどの男子がそわそわする日である。

しかし、男子といえども、製作されてから数年しかたっていないアンドロイドは、「バレンタインデー」と聞いても「バン・アレン帯のお誕生日ですか？」と、普通は思いつかない解釈をするのであった。

80年代に大好評を博したゆる～い部活コメディの傑作、ゆうきまさみの『究極超人あ～る』のバレンタインデーエピソードが、「14日の土曜日」。上記のアンドロイドとは、主人公のあ～る君（本名はＲ・田中一郎）のことである。
ちなみに「バン・アレン帯」とは、地球を取り巻く放射線帯の名称だ。もちろん、お誕生日などない。

この季節、大学受験などをひかえた高校3年生は自由登校となっていることが多いが、彼の通う春風高校は、2月14日が登校日になるように曜日を設定している、自由すぎる校風だ。
まあ、アンドロイドが在籍しているくらいだから……。

本エピソードでは、彼が所属する光画部（活動内容は写真撮影。いちおう。）の面々を中心にした、それぞれのこの日の過ごし方が活写される。
常連のOB・鳥坂先輩はあ～るにもっともらしい嘘の由来を教え、女装が似合う兵藤信（まこと）から差し出されるチョコに曲垣剛は動揺し（この男子2人は、幼児期にうっかり結婚の約束をしているのだ）、部費にシビアな天野小夜子は義理チョコの横流しを計画する、など。

といっても、肝心のあ～る君はお米しか食べられない仕様で、バレンタインデーを知ってもさほど興味がわかないのである。
だがなんと、部外の名もなき女子からさりげなく本気チョコをゲットしているのだ！

そういえば、不思議キャラの後輩・西園寺えりかもあ～る君になついているし、色恋沙汰にがっついていない米食系男子（？）は、いやし系として女子受けがいいのかもしれない。しかし、渡されたハート型のおにぎりにかぶりつくあ～る君と、それを見つめる姿から推定すると、本命はやっぱり活発な同級生の大戸島さんごかも？

もうひとりの同級生でおしとやかな堀川椎子から渡されたハート型のせんべいは、昨年（2016年）に期間限定で商品化されており、まさに時代をこえて長く愛される作品だ。
ちなみに、本気チョコへの対応において「朴念仁」ぶりを発揮したあ～る君は、次の回でニンジンのかぶり物を着て「ぼくは、じつはにんじんだったのです。」とのたまう。「ぼく、にんじん」→朴念仁。う、う～ん……。

「バン・アレン帯」といい、こういった味わい深い地口がふんだんに転がっているのも『究極超人あ～る』の大きな魅力である。

＜文・和智永 妙＞
「このマンガがすごい！」本誌やほかWeb記事などを手がけるライター、たまに編集ですが、しばらくは地方創生にかかわる家族に従い、伊豆修善寺での男児育てに時間を割いております。