日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『嫁へ ~アラ還愛子ときどき母3~』
『金子節子“家族”傑作選 嫁へ ~アラ還愛子ときどき母3~』
金子節子 秋田書店 ¥685+税
(2017年2月16日発売)
主人公は、母として妻として家族を支えてきたアラ還の愛子さん。2人の息子、ひとりの娘をりっぱに育てあげ、現在は定年退職した夫と2人暮らし。
だが、子どもたちは今でも困ったことがあれば母に相談を持ちかけてきて……。
いやぁ、愛子さんみたいなお母さんがいたら、それは頼りたくなるでしょ。
アドバイスはするけど夫婦間の領域には立ち入らず、恩着せがましくならないよう心配りしながらサポートする、ホントにデキた昭和のお母さんなのです!
本巻は、バツイチでしばらくシングルライフを送っていた長男・大樹のお話。
4年間の交際を経て、やはりバツイチのシングルマザー・美香といよいよ結婚のムードが高まってきた大樹。彼女の息子、小学2年の拓海にもなつかれていてまったく障害はなさそうに思われたが、美香には大樹のもとに飛びこむのを躊躇する理由があった……。
親子関係が良好ではない家はゴマンとある。また、かつてはそうではなかったけれど、大人になってから親子関係が変化するケースもある。
「何歳になろうとあなたは私の“子ども”」と、いうことをきかせようとする親にもいいぶんはあろうし、「こっちはいい大人なのに人生に口出しされたくない」と思う子の理屈も……。この手のいざこざ、大人になるほど噴出してくるもので。白黒がつく正解はないし、正論で解決できるものでもない。
愛子さんが物語を通じて教えてくれるのは、結局はお互いにもののいい方、態度のとり方が重要なのだということ。
愛子さんだって、不満も持てば怒りもするフツーの人間。だからこそ、日頃から他人への接し方に意識を持てばこんなふうに懐深く人に優しくあれるんじゃないか、そうなりたいなと思うのである。
<文・粟生こずえ>
雑食系編集者&ライター。高円寺「円盤」にて読書推進トークイベント「四度の飯と本が好き」不定期開催中。
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