日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『水木しげる漫画大全集 貸本漫画集2 飛だせ!ピョン助 他』
『水木しげる漫画大全集 貸本漫画集2 飛だせ!ピョン助 他』
水木しげる 講談社 ¥2,600+税
(2017年2月3日発売)
京極夏彦の責任監修のもと、2013年6月より刊行中の「水木しげる漫画大全集」。
そのファイナルシーズンにあたる第3期第2回配本となる本作は、水木が貸本漫画家デビュー間もない頃に発表した作品のうち、ギャグおよびミステリものをまとめたもの。
なんといっても目玉は『ルーニー・テューンズ』のバッグス・バニーや『トムとジェリー』のタイクを模したキャラクターが珍騒動を繰り広げる『飛だせ!ピョン助』や『ブル探偵長』シリーズ。
おそらく著作権を配慮して、水木自身が長らく封印していた作品が今回、ワーナー公認のもと初めて完全復刻された超レア作品である。
非マニアなファンとしては、手塚治虫ならともかく、水木しげるがアメリカン・アニメーション!? と驚きを禁じえないが、バッグス・バニーそっくりのウサギがユーレイにソースをかけて食べたり、空飛ぶ円盤に釣られそうになったり、やってることは完全に水木ワールドのキャラクターなわけで。
しかも、それが貸本時代のおどろおどろしい絵柄で描かれているのだから、これはもう世にも怪奇かつシュールなコラボとしかいいようがない!
いたずら大好きのピョン助が無邪気に暴れまわるシーンからかもし出される、禍々しいまでのイヤ~な空気たるや……。
のちの『ゲゲゲの鬼太郎』、『河童の三平』、『悪魔くん』へとつながるアイデアも随所に確認できる、ファン必読のミッシングリンク作だ。
<文・井口啓子>
ライター。月刊「ミーツリージョナル」(京阪神エルマガジン社)にて「おんな漫遊記」連載中。「音楽マンガガイドブック」(DU BOOKS)寄稿、リトルマガジン「上村一夫 愛の世界」編集発行。
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