365日、毎日が何かの「記念日」。そんな「きょう」に関係するマンガを紹介するのが「きょうのマンガ」です。
3月21日は、世界ダウン症の日。本日読むべきマンガは……。
『長男・次男・三男・夫よ 早く大人になってくれ!!(震え声)』
たちばなかおる 双葉社 ¥920+税
3月21日は、世界ダウン症の日。
ヒトの染色体は通常23番目まであり、それぞれが2本ずつあるが、ダウン症はそのうち21番目の染色体が3本ある先天性疾患群であることに由来し、2012年に国際連合が認定している。
この疾患を持つ長男を描いた『ユンタのゆっくり成長記 ダウン症児を育てています』で知られるたちばなかおるが、同じくダウン症の次男を持つタレントの奥山佳恵とともに、この日に開催されたイベントのトークショーに出演したそうだ。その時のエピソードは、同著者の4コマエッセイ『長男・次男・三男・夫よ 早く大人になってくれ!!(震え声)』にて綴られている。
ちなみに、奥山佳恵もあいかわらず若々しく、作中でもかわいらしい天然エピソードを披露してくれるが、著者ご本人もかなりの美人ママである。
そんな著者は、当日緊張のあまり、電車内で持参したハンドクリームを塗ったつもりが、なぜか洗顔フォームだった! などのトラブルを乗り越え、無事トーク終了。
めったにない経験をできたので、きっかけであるユンタ君にお礼をいうが、その反応は予想外のもので……!?
世間一般のイメージでは、障がいのある子を授かったお母さんといえば、その子を「天使」と呼び、自身の幸せをかえりみず、すべてを捧げる菩薩のような姿が浮かびがちだ。
そうなると、普通の明るいコミックエッセイのように、旦那様の愚痴や自虐ネタで笑うことはできないのだろうか?
いや、こちらのコミックエッセイでかいま見える子育ての実情は、ダウン症の長男と、元気いっぱいの次男三男、ついでに精神年齢が同じくらい(?)の旦那様も抱えたうえでの共働きをこなしつつ、男の子の予想外行動に驚いたりあきれたりの日々だ。
ときには知りあいの男性と禁断の「よろめき」もあり(もちろん、シャレの範囲で)、なによりこんなに笑える実録マンガが描けている。
普通プラスアルファの生活ぶりは、すべてのお母さんや子どもが欲しい女性たちを元気づける。
昨今は出生前診断も取りざたされているが、著者も別の本でそれを全否定するつもりはないと述べている。
ただし、知っておくべきなのは、診断でわかるのは、ダウン症とそのほかいくつかの疾患だけで、判明しない先天性の障がいの方が多いほどだということである。
もちろん、不慮のケガや病気で障がい者になる可能性はだれにでもある。障がいを回避するよりも、それでも笑っていられる世界のほうが、ハンディキャップのない人にとっても絶対に生きやすい。
だれもが普通に過ごしていられる「ノーマライゼーション」の流れが、コミックエッセイからもきりひらかれていってほしい。
<文・和智永 妙>
「このマンガがすごい!」本誌やほかWeb記事などを手がけるライター、たまに編集ですが、しばらくは地方創生にかかわる家族に従い、伊豆修善寺での男児育てに時間を割いております。