365日、毎日が何かの「記念日」。そんな「きょう」に関係するマンガを紹介するのが「きょうのマンガ」です。
3月23日はルルイエが浮上する日。本日読むべきマンガは……。
『最後の性本能と水爆戦』(「ルルイエから来た少女」所収)
道満晴明 ワニマガジン社 ¥940+税
3月23日は「星辰の位置正しき時」。つまりルルイエが浮上する日であるのは、もちろんご存じですよね? ……えっ? なんのことやらさっぱりわからない? ちょっと、SAN値は大丈夫ですか??
……などと強引に続けているとこちらが正気を疑われてしまうので説明しておくと、これ、すべて「クトゥルフ神話」にまつわる話。
ルルイエとは、そのクトゥルフ神話に登場する架空の地名であり、物語の中核となる非常に重要な場所。そして、ハワード・フィリップ・ラヴクラフトの小説『クトゥルーの呼び声』での記述によると、クトゥルー(クトゥルフ)が目覚め、海底に沈んだルルイエが再び浮上したのが、本日ということになっております。
……とまぁ、説明したところでさっぱりわからないことには変わりありませんね! そもそもラヴクラフトの記述によると、本来は「クトゥルフ」も「ルルイエ」も人間には発音不可能な単語とのこと。
そんなものをここで簡潔に説明するには無理があるので、ちゃんと知りたい人は、ちゃんとラヴクラフトをお読みください。
さて、小説では「異常極まりない」と描写されるルルイエではあるが、日本だってその不可思議度合いにおいては負けず劣らず。
なにせ「名状しがたきもの」と描写されるクトゥルフの邪神ですら「カワイイ」に染まってしまうのだから、それはそれで異常極まりない世界といえるだろう。
その代表作として『這いよれ!ニャル子さん』があがるとは思うが、本日はよりダイレクトにルルイエがタイトルに含まれる、道満晴明の短編作品「ルルイエから来た少女」(単行本『最後の性本能と水爆戦』に所収)を紹介しておくことにしよう。
道満晴明といえば、近年は『ニッケルオデオン』など独特な透明感のある作品も人気ではあるのだが、もともとは成年向けジャンルで精力的に活動していた漫画家。そして、「COMIC快楽天」などで発表した短編をまとめたのが『性本能と水爆戦』シリーズである。
もっとも、掲載誌が成年向けマンガ誌ではあるものの、エロ要素はかなり淡白なのが持ち味の作家。
それゆえ『性本能と水爆戦』シリーズは、最初のもの以外は一般コミック扱いとなっている。
……が、しかし、一般コミックだからといっておとなしいかと思ったら大間違い! どの作品も、ありえないシチュエーションとありえないテンポでどんどん合体! ライトな描写で、とんでもなくディープな性癖が次々と……って、これ以上くわしくは書けません!
そんななかでも、あきらかに下半身が異形の少女との交流(というか粘膜的な交わり)を描く『ルルイエから来た少女』は、とうとう来るところまで来た感が満点。
単行本全体がどうかしてるのでだんだん感覚がマヒしてきますが、こっちのほうがラヴクラフトよりもだいぶ狂ってるような気も。
クトゥルフとかロボ・ジョックスが出てくるエロマンガこそ「名状しがたきもの」なのでは……? ま、端的にいうと、最高です!
<文・大黒秀一>
主に「東映ヒーローMAX」などで特撮・エンタメ周辺記事を執筆中。過剰で過激な作風を好み、「大人の鑑賞に耐えうる」という言葉と観点を何よりも憎む。