365日、毎日が何かの「記念日」。そんな「きょう」に関係するマンガを紹介するのが「きょうのマンガ」です。
4月4日は「あんぱんの日」。本日読むべきマンガは……。
『だれも知らないアンパンマン -やなせたかし初期作品集』
やなせたかし 復刊ドットコム ¥1600+税
4月4日は「あんぱんの日」。
明治維新以降、食文化に西欧の風習が取り入れられるなか、木村屋総本店の創業者である木村安兵衛と息子・英三郎が小豆あんをパン生地でくるんだあんぱんを誕生させたのは、1874(明治7)年のこと。
この翌年、木村安兵衛は天皇の侍従からの依頼を受け、明治天皇に八重桜の花びら塩漬をうめこんだ「酒種桜あんぱん」を献上。明治天皇、皇后から賛辞を受けたのが1875(明治8)年4月4日であることが、この記念日が生まれた由来だ。
ここで紹介するのは、あんぱんと同じくらいの国民的な人気者「アンパンマン」のマンガである。
「アンパンマン」を日本中に知らしめたのが、1988年にスタートし現在も続くアニメ版の『それいけ!アンパンマン』であるのは間違いない。しかし、やなせたかしによる「アンパンマン」の原点は1973年に発表された幼児向けの絵本であり、また本作に収められたマンガである。
本作には、やなせが編集長を務めた「月刊いちごえほん」(サンリオ刊)で1976〜82年にかけて連載されたマンガ版『アンパンマン』全71話が収録されている。
おなかを減らしている人に気前よく自分の頭部を差し出す姿、ジャムおじさんやバタコさん、しょくぱんまん、カレーぱんまん、ばいきんまんなどおなじみのキャラクターが登場するのはアニメと同じ。
しかし、掲載誌は子どもの読者のみが対象ではなかったこともあってか、端的にいうと“優等生的”でないのが魅力だ。 たとえばバタコさんは一生懸命ジャムおじさんを手伝う一方、なかなかのオテンバ娘で年相応の遊びたがりな顔をのぞかせる。
そういえば当時、雑誌でこのマンガをときどき読んでいた筆者は、アニメ版のアンパンマンがずいぶんりりしいことに、やや違和感を覚えたものだった。
また、本作を読んでいると、やなせたかしの“詩人”としての一面にもハッとさせられる。すべてのセリフがリズミカルで愛嬌がいっぱい。のびのびとしてユーモラス、ときどきシュールなマンガ版ならではの作品世界をぜひ味わってみてほしい!
<文・粟生こずえ>
雑食系編集者&ライター。高円寺「円盤」にて読書推進トークイベント「四度の飯と本が好き」不定期開催中。
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