365日、毎日が何かの「記念日」。そんな「きょう」に関係するマンガを紹介するのが「きょうのマンガ」です。
4月8日はヴィーナスの日。本日読むべきマンガは……。
『ユニコ』上巻
手塚治虫 リトルモア ¥1,500+税
4月8日、本日は「ヴィーナスの日」である。
1820年のこの日、農夫のヨルゴス・ケントロタスなる人物が、当時はオスマン帝国統治下のミロス島(現在はギリシア領)にて世に名だたる「ミロのヴィーナス像」を発見したことが由来である。
愛と美の女神にふさわしい、神秘的な裸像だ。ビーナス、ウェヌスと表記されることもある。
女神ビーナスが登場する作品として、手塚治虫の『ユニコ』をあげておきたい。
ただし、こちらのビーナスは、なかなかに困った悪女である。
一本角を持つ幻獣・ユニコーンのユニコは、ナナシス王の末娘・プシケに愛されていた。プシケの美しさや幸せを快く思わないビーナスは、その恵みをユニコによるものと考え、策略によってプシケからユニコを略奪、西風の精・ゼフィルスに命じて、ユニコにすべてを忘れさせ、時間も場所もずっと遠くへ連れ去ることにした。
見知らぬ世界に降り立ったユニコは非力だが、自身を愛してくれる者に出会うと、その者を幸せにするために力を発揮する。出会いと別れを繰り返し、そのたびに記憶を失う運命に翻弄されるが、そのなかで、猫のチャオ、アクマくんなど有名なキャラクターも登場している。
『ユニコ』『ユニコ 魔法の島へ』とアニメ映画にもなっているため、ユニコは手塚キャラクターとしての認知度も高く、キャラクターグッズから知った人も多いだろう。
コミック版はアニメよりもちょっと大人っぽいストーリーである一方、ユニコはより人間の乳幼児に近い顔立ちで描かれており、さらにいたいけさが増している印象だ。
ビーナスの残酷な美が引きたてる、せつなくも愛らしいユニコの放浪譚。
童話のようにかわいらしく、ロマンチックなストーリーは、初出の雑誌「リリカ」に近い判型、さらにフルカラーで楽しめるリトルモア版で読むことを、ぜひおすすめしたい。
<文・和智永 妙>
「このマンガがすごい!」本誌やほかWeb記事などを手がけるライター、たまに編集ですが、しばらくは地方創生にかかわる家族に従い、伊豆修善寺での男児育てに時間を割いております。