『ホムンクルスの娘』第2巻
君塚祥 一迅社 \590+税
(2014年8月25日発売)
時は昭和9年。帝都にそびえ立つは浅草十三階。
チンピラ青年の九二郎はある日突然、帝国陸軍の技術研究所、特務・洩矢機関所属の軍人にさせられ、日本中の呪物を回収しなさい、と命じられる。もうなにがなんだかわからない……そう思っていた彼が出会ったのは、水槽のなかに眠る人造人間(ホムンクルス)の少女、月子だった。
昭和初期の不安定な生活感とオカルト要素がふんだんに盛り込まれていて、怪しげなギミックが出るたびワクワクする。見世物小屋、新興宗教団体、超能力者。
グロテスクで胡散臭いエッセンスを、実際に語られていた怪談と組み合わせて物語の要にしているのがこの作品の魅力だ。
たとえば「くだん」と呼ばれる人と牛の混じった妖怪がいる。なんでもひとつだけ予言ができて、その後すぐ死んでしまうそうだ。
この江戸時代からの伝説を昭和初期風にアレンジ。予言者を作るために人体実験機関を設けるが、実験で死亡する者があとをたたず、人造人間計画を発動していた……とかもうたまらん、なんていかがわしい昭和!
霊力のために地下仏殿を作っちゃったり浅草十三階を建てたりする様は、ちょっとした科学のようだ。
九二郎と月子の2人は、自分たちが何者なのか、帝都に何が起きているのかを、事件に巻き込まれながら見つけていく。
1巻で広がった、帝都崩壊の大風呂敷は、2巻で余すところなくたたまれている。
もっと日本中の呪物集めをする2人の冒険活劇が見たかった気もする。
しかし事件をきれいにまとめてケリをつけ、2人が人間らしく生きようと一歩前に出ているからこそ、「おもしろかった」と心から言える作品になっている。
<文・たまごまご>
ライター。女の子が殴りあったり愛しあったり殺しあったりくつろいだりするマンガを集め続けています。
「たまごまごごはん」